事業承継の対価を契約時にすべて支払うべきかどうか、よく質問を受けます。
通常のM&Aでは、契約時にお金が動きます。資金がなければ、企業の買収は不可能です。
ところが、税理士事務所の仕事の性格上、顧問契約による定額顧問料が毎月入ってきます。
もちろん、なかには遅れて支払われることもありますが、その割合は高くありません。
さらに、一般の事業と異なり、取引先の倒産などに連鎖して倒産することはありません。
税理士が顧問先の連帯保証人になることもほとんどありませんし、税理士会で禁じているところもあります。
このように、毎月ほぼ期待される資金が入ってきますので、支払いの計画も立てられます。
いわば、仕事を承継した途端に、顧問料収入が入ってくるので、この資金が対価に変身します。
引き受け手は一時金を用意する必要がありますが、その金額は内部留保で手当てができるのが普通です。
なかには、全額契約時に払ってほしいという先生もいます。
この場合、顧問先の引継ぎが確実ではないので、1年~3年、5年の分割払いをする例が多くなります。
さらに1年後に引き継げたかどうかを確認し、承継の対価を確定することもあります。
ですから、それほど資金が準備できなくても、事業を承継することは可能です。
しかし、引き受け手の経営内容がしっかりしていない場合は、当然の話ですが、候補者にはできません。
ですから、弊社では引き受け気手にも、経営実態を明らかにする資料の提供を求めます。
これが出せない先生は承継者候補から脱落します。譲り渡す先生もこれで安心です。
これまでの案件で一件も支払い不能になって例がないのも、こんなチェックがあるからでしょう。
今後も税理士事務所の経営はますます厳しくなります。
消費税が8%、そして10%になる時には日本の零細企業、税理士さんの顧問先はどうなるのでしょう。
パパママストアはすでに姿を消し去ろうとしていますし、家内工業も経営に四苦八苦の状況。
これで中国のバブル経済がすっ飛んだら、日本経済も大打撃。税理士さんの顧問先がなくなってしまう。
残るのは、経営状況の良い税理士法人や、地域一番の事務所だけになってしまわないだろうか。
事業承継などを通じて、ますます合従連衡が進む税理士業界ではないでしょうか。
事業承継支援室長
大滝二三男