税理士さん一人、職員も一人、しかも他人というのはよくある形。
8年前にお手伝いした88歳の先生の事務所が、まさにこの状態だった。
先生も辞めたいのだが、職員の生活を考えると、事務所を閉じることができない。
先生から相談があってから、2年後が経過。
たった一人の職員が55歳になるので、そろそろ辞めたということで、廃業を決意。
当時の顧問先は18件、その職員一人ですべてをこなし、先生は専ら顧問先との世間話の終始。
その女性職員が仕事をしなければ事務所は回った行かない状況は、過去数年間そうだった。
突然その職員が他の事務所に行くという決断をすれば、お客さんのことも分からない状況にもなっていた。
幸いなことに先生と職員の関係はすこぶる良好で、すんなりと承継も終了した。
その後、なんとこの先生と職員は結婚し、つい最近、最愛の妻に看取られて天国に召されたという。
このケースでは、先生と職員の信頼関係がしっかりし、承継にも非常に協力的であった。
承継者も引き継いだ18件の顧問先、7年経過した現在も1件が廃業しただけで、顧問を継続している。
今の経済状況で1件しか顧問契約が解消されていないという、実にすばらしい承継例だ。
しかし、先生は辞めるが、職員は引き継いでほしいという場合、その職員と承継者が馬が合うかどうか。
切実な問題だ。というのも、個人事務所の場合、先生と職員お相性が一番の問題。
「あいつは仕事はできるが、正確が悪い!」なんて言われる職員も少なくない。
それでも自分が職員として引き受けた以上、自分の機嫌で辞めさせるわけにはいかない。
そんな自己規制もあるが、他人が採用した職員を引き継ぐかどうかは、別問題。
仕事ができればそれでいいと達観する先生もいるが、首をひねる先生も少なくない。
しかし、たった一人の職員を採用しなければ、事務所の中身が分からないとなれば、話は別。
貴重な戦力だから、しっかり仕事をしてもらえれば、それで事務所の力にもなる。
承継する先生には、広い心で受け入れてもらいたい。引き渡す先生もこれで安心ということになるはず。
事業承継支援室長
大滝二三男