,たまたま、百田尚樹の『永遠の0ゼロ』という小説を読みました。
わが父親は先の大戦の敗戦時昭和20年8月当時は、34歳、2児の父親でした。
昭和20年8月15日、赤紙にはその日が山形の連隊への出頭日だったそうです。
そこで、玉音放送を聞き、敗戦を知り、数日後に山形・白鷹町の家に帰ってきたそうです。
父親は、結婚するまでに7回も手術を、とても結婚できるような体ではなかったそうです。
でも、母の話ではだまされた見合いをし、昭和16年に結婚。17年に長男、19年に次男が生まれ、20年3月の東京大空襲で生まれ育った山形に疎開。敗戦後、東京に戻るのが遅れ、23年に3男坊の私が生まれ、その7か月後には帰らぬ人に。父親は結婚生活7年間で男の子3人を産ませ、グットバイです。
こんな腰抜けの男ではないのが今回の小説のの主人公家族。(父親を批難ているわけでゃありません。)
この小説の主人公は、海軍航空隊の特務下士官として従軍していた祖父の実像を探す孫たち。
作者はストリーテイラーとしての抜群の能力で、読んでいるものをグイグイと引っ張り込んでいく。
司法試験に敗れた孫が、自分探しの一環として、特攻で死んだとされる祖父の実像を探し出す旅に。
超人的な祖父の生きざまを、当時の同僚や部下を探し出す旅の中で、人間の生き様を追っていく。
その中で、戦前戦後を通じて、日本の行く末を操作したのが、新聞であることを痛烈に見抜いている。
まさに今の日本の、3.11の”大本営発表”を何の批判もなく、書き続けたその姿を髣髴とさせる。
経済界の重鎮となった元特攻要員に語らせるその一言二言が、まさに今の姿。
この章では、まさに喝采を叫びました。マスコミを信じてはいけない。
信念、自らの生き様をバックボーンに、日々の取材をし、情報提供をしている新聞記者はいない。
エリートと思い違いをしている日本海軍のキャリアたちを、巨大マスコミの記者がリンクする。
戦争に向かっていった社会がそうさせた、なんて言わせない。そんな説得力があります。
物語は想像も付かないような形で進みますが、主人公の祖父の生き様がまさにスーパーマン。
でも、こんな人がひょっとしたら、いたのではないだろうか。いて欲しい、と感じさせるものでした。
この本(文庫本)を読みながら、涙を流し、電車の中でハンカチを何度も使いました。
まさかのどんでん返しがありますが、これこそ作者の才能。これは見事です。
さてさて、65歳を目の前にして、読むべき書物があまりにも多いことに唖然とします。
さる無期懲役囚はひと月に100冊以上の本を読むんでいるそうです。
この方の本も数冊読んでいますが、生きるということ、本当に素晴らしいし、いかに生きるか、勉強です。
事業承継の仕事をしていると、本当に生死を目前にしている人とお会いします。
その方にはご家族もあり、従業員もいます。
そんな関係者の方々が、将来を安定した生活を、微力ながらお手伝いするのが、私たちの役割です。
でも、同じ人生をトレースするわけにはいきません。そんな大それたことを言う気にもなりません。
フィックションの中にも、人間としての全う生き方を示してくれるいい作品があります。
百田尚樹、名前で、「モモタ」ではなく、「ヒャクタ」というのが面白い。
この文章、13日夜に書いた14日分ですが、きょう16日に気が付いたので、本日分掲載しました。
事業承継支援室長
大滝二三男