企業で言うなら、創業社長とその役員。こんな構図が、税理士法人にはあります。
出資を伴う税理士法人の社員就任ですが、出資の額での権利関係の強弱はありません。
この点が普通の企業とは異なることではないでしょうか。
税理士法人の総会では、社員税理士はそれぞれ一票の権利を保有します。
一般の社員総会・株主総会では、株式の保有量によって、決議事項に投票できます。
したがって、発行済み51%株式を所有する人が、企業を支配するkとができるわけです。
ところが、税理士法人では、社員一人一票ですから、そうはいきません。
例えば、3人の社員がいる場合、創業税理士とその職員だった税理士2名と法人を設立します。
原則、権利・義務共に一人一票ですから、2名が組めば、たとえ創業税理士が反対しても通りません。
これはあくまでも争いがあった場合の、特殊なケースですが、起こりえないことではありません。
普通は、創業者である代表社員税理士がトップに位置し、他の社員税理士は役員の立場にあります。
創業者が決めたことを役員がひっくり返すような事態は、ほとんど起こりません。
しかし、これが合併などにより大きく、その権力関係が変わってくることも考えられます。
合併前だと、社員税理士間では主従関係が成立していたものが、力関係に変化が起きます。
若い社員税理士たちが、高齢化した創業社員税理士に対して、”変革”を求めるような事態も出てきます。
経済構造、経営環境の変化などに対応するために、新たな役員と創業者の間で意見の相違が出てきます。
同時に、”生涯現役”を考えている創業者に対して、組織の若返りを主張する勢力も。
こうなると、まったくに権力闘争の様相を呈してきますが、表面化するには時間もかかります。
若手社員税理士にそれなりの力がついてこないと、このような事態にはなりません。
しかし、創業者が病気等で長期の現場離脱を続けた場合、経営上からも組織の変更が求められます。
個人事務所の場合、所長が長期不在となっても、勤務税理士がその事務所を守り続けます。
というのも、勤務税理士が税理士としての責任を問われず、あくまでも所長がその責任を取るからです。
これが税理士法人となると、無限連帯責任で、社員は全員責任を問われ、逃れることができません。
社員税理士である以上、しっかりと責任が取れるかどうか、その立場を明確にすることが求められます。
復帰不可能と思われる税理士でも、個人事務所の場合はかなり長期にわたっても所長を継続できます。
しかし、税理士法人では、個人事務所のようにはいかなくなります。
社長不在が長期に及べば、取引先も不安に思い、企業としても先行き不安になるのと同じでしょう。
社長を交代し、指名人事により新社長の誕生となるかもしれません。
このようなことを見続けてきた税理士さんとしても自らの引き際で、反乱を見ることは良しとしないでしょう。
制度誕生10年、政権交代ではありませんが、代表社員交代がちらほら出てきています。
いざこざがなく、主従関係から、成熟した組織に様変わりした税理士法人の代表者の交代劇が望まれます。
事業承継支援室長
大滝二三男
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