先週、こんな内容の投稿がありました。
「下町で、長年地盤を築いてきた先代がなくなり、その後を継いだ息子が、お客さんのことを考慮せずに事務所をビジネス街に移転。事務所の賃貸料は目の飛び出る高さ。お客さんから交通費はかかるは、事務所にかかる費用は多くなるなどから、それを補うため、職員につらく当たり、長年働いてきた職員は辞めて行き、それとともにお客さんも離れる。ボーナスの支給も資金繰りの悪化で、時期も変更。その平均支給額も一桁。新しい事務所の応接セットの椅子一脚にも満たないボーナスに、職員の士気も下がる一方。どうすればいいのでしょう」
どうでしょう。今の経済状況を考えると、「ボーナスも手にすることができることで満足しろ」と言う、そん経営者もいるだろうが、税理士事務所の環境を考えると、今回の投書の内容はちょっと首をひねることも。
この事務所の先代の所長さんに、35年近く前に一度インタビューしたことがある。下町の人情豊かな先生で、人望もあり、顧問先からも慕われていたいい先生だった。職員も先生の期待に応えようと、元気に働き、明るい事務所そのものだった。
ところが、代替わりした事務所の職員からの証言では、古い職員は息子さんにはついていけず、ほとんど退職。その形も、喧嘩したり、無理やり辞めさせられたり、とても普通の経営者とその従業員という形ではなかったという。
東京の下町といえば、隣三軒両隣と、近所の人々の家庭の中まで廻りがみんな知っているような、そんな状況だから、遠くの親戚より近くの他人で、仲よく仕事も、付き合いもしてきたもの。そんな関係をすべてぶち壊し、勝手気ままな税理士(息子)の天下になってしまったという。
先代の先生の下に元気に仕事をしていた職員も今やなく、仕事を任されている職員はここ数年の採用者ばかりで、下町の親父さんたちとは、ほとんど身近に接したこともない職員たち。事業承継した息子も、なんとお客さんの所にはほとんど顔を出さず、職員任せ。その職員も昨日今日入った職員だから、口の悪い顧問先の社長から「あんた、だれだったっけ?」
実に深刻だ。そんな経営者でも毎月決まった金額が振り込まれていることに大満足。金額はそれほど多額なものはないが、それでも、毎日、産業地で一晩を過ごせる現金は入ってくる。そこで、自分の財布は使わず、事務所の金で高い酒を飲む。
多分この事務所は長くはないと思うが、それにしてもほとんど業務を行わない人が、豪勢な事務所に移転し、職員の行動も顧みないとなれば、客は逃げるし、職員もそれに応じてリストラ。どう考えても、経営者としては落第。草葉の陰で、先代もため息をついているに違いない。
こんな愚痴を言ってくる職員さんもいるのです。そんな職員は辞めて結構というでしょうが、こんな事務所に限って、中堅職員に色目をう使い、経営者だけが良い思いをしているような気もします。いつの世にもある光景ですが、今の経済状況下では淘汰される事務所なんでしょうね。
事業承継支援室長
大滝二三男