定年を迎えた国税職員には数年前から、一般企業で嘱託にあたる、再任用というシステムの対象とされた。
退官後、顧問先斡旋が禁じられ、税理士開業が厳しくなったことも、この制度の起因でもあるようだ。
昔は元税務職員に顧客あっせん
それ以前は、署長以下の役職者は、顧問先をもらって税理士に転身し、税理士の半数以上がOBだった。
元税務署員の経験が物をいい、経営者の中にはOB税理士としか、契約しないという信奉者もいた。
しかし、生存者競争の厳しい大都会で、定年後、顧問先を一から営業する税理士は、いかにも難しい。
そのため、職責はダウンするが、給料の50%が支給される再任用を選ぶ定年組は、税理士にはならない。
また、先輩のOB税理士に承継含みで事務所入りを誘われた定年組もいるが、これは極々少数。
再任用が終了し、その後に税理士になる人もいることはいるが、肩書がないのが寂しいと消極的な動機。
「若い税理士の下で働きたくない」
あるOB税理士が引退を考え、事務所に机を貸している元同僚に承継の意思を訊くと、答えはノー。
そこで、同じ支部の若手税理士に話をすると、是非お願いしたいとの積極的な対応に、決意は固まった。
ただ問題は、再任用が終了した後輩をパートで雇っていたため、その職員も引き受けてもらうのが、条件。
開業して数年の40代の相手の税理士は、実務のできる職員がいれば、営業にも注力できると、雇用を約束。
そこで初めて、所長は後輩の職員に事務所を若い税理士に承継し、その際、雇用も守る約束をしたと説得。
ところが、有資格のその職員は、古希を迎える自分は、そんな若い先生の下で働きたくない、と拒否。
今の事務所で働き続けたいと言う。これには先輩として、彼を辞めさせて、事務所を譲れなくなった。
まとめ
悩みに悩んだ先輩税理士は、80代後半になることも顧みず、その職員のために事務所を続けることに。
こんな税理士さんもいるんですね。でも、承継を拒否した職員はいつまでも勤務を続けるのか、心配です。