税理士稼業もはや40年。過去には事務所内に、税理士試験に合格して独立した若者が何人かいた。
歳とともに若い従業員が来なくなり、自らの行動範囲も狭くなり、新しい人々と遭遇することも減った。
卒業生"のなかには、年賀状のやり取りだけの人もいれば、時に応援を頼める税理士もいる。
新しい人に目が向かないが、自分が指導した人には心を開いて話ができるので、気も楽になる。
そんな税理士に事務所の面倒を見てくれとそれとなく話を向けたが、なかなか本気にはなってくれない。
そうこうするうちに、50代の職員から事務所を辞めたいとの話が飛び出した。
訊いてみると、このまま事務所に居続け、私にもしものことがあると路頭に迷い、家族を養えなくなる。
数年後に雇う税理士もいなくなるだろうから、今のうちに生活が安定する事務所に移りたいという。
そう言われると、何時なんどき、体が動かなくなるかわからない、確かにその通り、自身も不安だらけ。
その職員が離れてしまうと、事務所のタガが外れ、まともにお客さんへのサービスができなくなる。
さて、どうしたものかと考えたとき、事務所を若手か、税理士法人に任せるのが一番だと考えた。
卒業生には期待に応えられる人材がいないので、仲介を依頼。直ぐにも候補者が見つかった。
辞めると言ってきた職員に話をすると、顧問先の仕事を続けられるので大賛成。
自分も税理士を辞めずに、経営から身を引き、承継先の組織の一員、それも会長として身分は保証された。
まとめ
職員の生活の糧を自らの取り上げてしまう事態を未然に防げたことが、最大の結果で、気持ちも楽になった。