従業員一人当たり2000万円を売り上げる事務所から、税理士法人の支店に入りたいとの相談が来た。
所長は60代後半で、健康を害しているわけではなく、朝は誰よりも早く出勤し、前日の仕事をチェック。
8:30には職員を前に朝礼で、前日の業務の注意事項などを話し、午前中には事務所を出て、顧問先を訪問。
その後、事務所からの緊急連絡が入らなければ、事務所には帰らず、自宅に向かう。
所員1人当たりの売上が平均の倍以上
職員からの報告はその日の内にメールでは入るから、職員の帰社を待つまでもなく、業務の全体を把握。
それでいて、職員一人当たり業界平均の2倍以上の売上を上げるノウハウを持つ税理士からの突然の依頼。
もちろん、依頼を受けるまで、事務所の実態を把握していたわけではないので、所長から聞いて驚いた。
しかも、地方都市で、県庁所在地でもなく、そんな事務所に1000万円を超える給与を手にする職員が半数。
そのノウハウと共に所長が支店の社員税理士になれば、法人全体の志気が上がると某法人が手を上げた。
法人の考えを所長に告げ、両者面談となり、互いに好反応の内に、具体的な交渉に入ることに同意した。
法人もそれまでに承継した事務所を超えるよい条件を提示し、所長も特別な条件を出さず、ほぼ同意。
そこで、契約書案等を提示して、その返事を待ったが、所長から最終判断は息子に話してからとの連絡。
後継ぎの息子が突然登場
話を聞くと、大学卒業後も東京で一人住まいの息子さんが、その時も税理士予備校に通い、残り2科目に挑戦中だとか。
しかも、この3年間は合格科目なしということで、所長は覚悟を決め、仲介依頼となったと言うことが判明。
その息子さんが所長に、あと2年間は待って欲しいと懇願。その言葉を待っていたのか、所長は交渉を中断。
まさに、承継交渉が息子さんの尻を叩いた形になり、事実2年を待たずに残り2科目を一挙にクリア。
なんの不自由もない予備校生活に甘えきっていた息子さんにとって、父親の事務所はやはり魅力的だった。
まとめ
試験合格後、事務所に入り2年間の実務経験を積み、今では事務所の後継者として着実に伸びている。
それにしても、息子の尻を叩く材料に使われるとは、なんとも言いがたい思いだが、逃した″獲物″は大きい。