税理士の父親が死亡し、家族が役員を務める会計法人は″片肺飛行″になるが、生活のため業務を継続。
父親の生存中は、会計法人の職員で税務を担当するものは、税理士事務所と兼務にして法をクリア。
所長の死亡に伴い、会計法人の職員が税務業務を行えなくなり、家族は葬儀後に税理士探しに奔走。
候補に上がったのは、会計実務には経験のない、60代後半の国税出身で顧問先を持たない税理士。
税理士会から紹介されたこともあって、初めての面談後、短期間で税務を担当することが決まった。
名義貸しが厳しく取り締まられていることから、税理士事務所を会計法人所有のビル内に移転。
会計法人の職員も、以前と同様に税理士事務所の兼務として、ニセ税理士行為にならないようにした。
顧問先との契約は、会計と税務は別々に行うように指導されたが、経営の主導権を持つ法人が行った。
入り口が会計法人で、税務は″雇われ税理士″に業務委託する形になり、当初はスムーズに業務は流れていた。
しかし、税理士が仕事に馴れる連れて、顧問先との契約は別々にするべきで、請求も別にすると要求した。
税理士事務所はあくまでも、会計法人の業務委託を受け、委託料を受け取る形は変えられないと話は決裂。
その結果、国税出身の税理士は契約を解除し、事務所も自宅に移転し、法人の契約税理士はいなくなった。
そのままでは、顧問先は新たな税理士を探し、会計法人の破綻は目に見えており、法人は再び税理士探し。
幸い短期間で、開業予定の40代前半の税理士・公認会計士が見つかり、事務所も同じビルに賃貸で入った。
この税理士は監査法人で税務も担当していたとの触れ込みだったが、実際は、実務は全くのド素人。
会計法人に税務にも精通した職員がおり、複雑な問題は審理畑出身の税理士に相談する体制で業務を継続。
税金を学ばなければならないCPA・税理士は、日常の税務処理を見守るうちに、自らの限界を知った。
そのため、税理士事務所を閉鎖し、監査業務に戻る決意を会計法人の代表者に告げた。
税理士として半年でギブアップ、税務業務を委託した会計法人は、またまた委託できる税理士を失った。
それでも、会計法人を解散して、税理士に事業承継する意思はなく、再び税理士探しに奔走する。
これまで、名義貸しを疑われないように対応してきたが、度々税理士が変わり、顧問先も不安を隠さない。
税理士に業務を譲るように奨める知人もいるが、会計法人の経営者は耳に栓をするように、話を聞かない。
会計法人には、亡くなった税理士家族の生活が懸かっているだけに、簡単には諦められないのだろう。
事業承継・M&A支援室長
大滝二三男