数年前に高齢を理由に事務所承継について相談された税理士先生から、改めて事業承継の依頼が来た。
平均的な規模の事務所
以前の事務所の概要は、所長以下男性職員2名(55才、39才、二人とも無資格)、40代後半の女性職員1名。
所長は当時72才、開業38年で、規模から言えば、平均的な事務所で、元職員のなかから税理士2名輩出した。
事業承継に関して、ご他聞に漏れず元職員の税理士に話をしたが、二人ともに引き受けを断わられた。
若手が辞めて売上1千万円減
新たに依頼をしてきた今回は、職員はこの間大病をした60才間近の男性職員と、50才を超えた女性職員の二人になった。
売上は30代の職員が辞めたため、担当していた顧問先の契約を打ち切らざるを得ず、1千万円近く減少した。
職員が辞職を言って来た時に、代わりの職員を採用しようと動き回ったが、即戦力は見いだせなかった。
今や大規模事務所でも、人材確保のため人材紹介会社に大枚を払っているが、その効果もあまり望めない。
まして、高齢の税理士が主宰する個人事務所に職を求める人はほとんどいない、人手不足は深刻そのもの。
このような状況に、75才を超えた所長は気力もなくなり、顧問先の不安を払拭できず、承継の道を求めた。
事務所の評価額が急降下
このような事務所を承継しようと考える税理士も、ここに来て、かなり厳しい条件をつけるようになった。
というのも、先生が高齢であれば、顧問先の経営者も先が見えており、引き受けた後の廃業が減点材料に。
こうなると、引き受ける対価も減る事態が見え、今回の案件も前回より評価は大幅に下がる結果となった。
依頼主に評価を告げると、最初に相談したときに承継してしまうべきだったと反省しきりだった。
しかし、年齢はともかく、仕事には何ら障害がない時に、事務所を閉める決断はできるものでもない。
60代前半の先生の事務所を引き継いだある所長は、粋の良い所長から引き継いだ事務所は職員も元気。
さらに、顧問先の社長も意欲満々の人も多く、職員も元気をもらえるので、対価は高くても元は取れる。
まとめ
ある人いわく、「事業承継は最盛期にやれ、退潮が始まると止まるところを知らない」。
税理士に必ずしも当てはまるわけではないかもしれないが、一理はある。