高齢の先生が、事業承継を考えて動き出しました。
ご自身の気力、体力を考えると、すでに”耐用年数”は過ぎています。
ある日突然に、救急車のお世話になることを考えると、気が休まりません。
病院で治療を受けて、復帰できればいいでしょうが、現状からは考えられません。
実は、事務所を閉鎖して、責任から解放されたいのが本音。
毎月の職員の給与支給などこまごまとしたことやお客さんとの接触も、すでにやる気がなくっています。
正直、辞めたいのです。でも、職員は自分の生活がありますから、所長には頑張ってくださいというだけ。
ところが、具体的に承継話を進める税理士がその経過を職員に進めると、これは大反対。
なぜなら、自分たちの待遇がこれまでと大幅に変えられ、給料も減額されるに違いないと考える。
自らの収入を削っても、職員の生活が満足できるようにと、考えてきた所長は”甘やかした”と反省。
現実は、職員に任せた業務を考えると、自分の取り分より、職員の給与はほぼ倍。
「倍返し」という言葉が昨年流行したが、税理士事務所の給与でいえば、あり得ない話だった。
しかし、例外的に温情のある先生の事務所では、職員の給与が所長の倍以上というケースも出てくる。
自らの生活にそれほどの資金を必要としなくなった所長は、職員に十分な給与を支給。
自らがそれほど仕事をしなくなっているからともいうが、経営者としてはいかに。
そんな事務所の事業承継をお手伝いをするときに、決まった起こるのが職員の”反対”。
経営者が決めれば、職員の反対など大したことはないというのは、一般企業の話。
税理士事務所で起きる職員の反対騒動は、日々の業務の主人公が職員だから大問題。
彼らが反対し、毎につの業務を麻痺させれば、事務所は機能しなくなる。
こうなると、毎月の報酬も請求しづらくなるのは、当然のこと。
集金するのも、彼らの仕事だから、集金もできなくなる。
でも、これまでの仲介事例で、乗っ取りといったような異常事態になった事例はない。
所長が苦労した姿を見た職員が、自分たちだけのことで徒党を組むことはない。
もう労働組合の時代は過ぎてしまった。労使がともに営業に努めなければならない時代に。
「事務所を乗っ取られます」なんて、時代錯誤です。そんな時代ではありません。
事業承継支援室長
大滝二三男