会計事務所の事業承継のお手伝いを始めて6年を過ぎようとしています。月日が経つのは早いものです。
この間に全国で多くの事務所承継のご相談等を受けてきました。そんな中で、承継希望者に対して、具体的な承継の案件もない段階で、お金を要求する業者さんもいるようです。
先日も、「優先的に承継者として指名されたいから」という理由で、お金を預けた先生とお会いしました。
弊社では、ホームページ上で承継希望者の登録をお願いしていますが、その際に入会金や会費、そして登録料をいただくことはありません。
これは、具体的に案件が生じた場合、委譲を希望されている先生の事務所と相性が合うかどうかが問題であって、事前にお金をいただいているから、承継先として最適であるとは到底いえないからです。
そして、お金を預かれば、こちらの判断も鈍り、承継先として適さないところまでも紹介する羽目になってしまう恐れがあります。この点も登録段階で、お金をいただかない理由です。
先日の先生は「本気で申し込んでいるのかどうか?多くの承継希望者がいる中で、優先的に相手を紹介されるため、お金を渡しました」という。業者も「希望者も五万といますよ」と、まず最初に預け金ありきだそうです。
弊社の、契約が結ばれ、承継が進んだ段階で初めて請求書を送る方法は、ひょっとすると”常識”ではないのかもしれません。彼の先生のように「預け金ですから、辞めるときには返してくれるでしょう?」と信じるのが常識?
でも、全く暢気のものです。お金を預けた業者が倒産するかもしれません。こんな時代ですから。それにしても、税理士さんたちは30万、50万円というお金を簡単に払うんですね。
これまでにも、そんな形でお金を集め、結果、なんら成果も挙げられず、退場していった業者さんたちは数えればきりがないくらいです。ある税理士さんは「まあ、営業経費だな。」なんて言っていますが、その心のうちは??
これからも、この業界で事業承継を始める業者さんも出てくるでしょう。契約までにそれなりの日数と費用がかかりますから、つい事前に費用をいただきたいとなることも分かります。
弊社でも例外はあります。それは九州や北海道で高額な交通費がかかり、かつ委譲することを弊社に全面的に依頼され、契約成立が見通せるケースでは、手数料の一部として、事前に交通費をお願いします。
もちろん、交通費という名目でも手数料の一部になりますので、契約後に決定した手数料から、その交通費は差し引きますので、ご安心ください。
今回も弊社の実務を公開してしまいましたが、これは事業承継をされる税理士さんが、変な話、騙しに遭わないようにとの思いからです。どうか、十分、ご注意をお願いします。決めるのは、先生、あなたです。
事業承継支援室長
大滝二三男