この秋に税理士の先生方とベトナム、カンボジアを訪問することになった。
中国に進出した企業が、人件費のアップで、中国から他の東南アジアに舵を切ってきた。
顧問先が東南アジアへの進出するようになって、税理士としても現地の実態を知る必要が出てきている。
そこでベトナムとカンボジアで日本人の経営する会計事務所を視察することになったわけ。
事前のこととして、学生時代にべ平連などのデモに参加したことを思い出し、種々の書籍を読んでみた。
その中で、一番印象に残ったのが、当時、南ベトナムでお産婆さんをしていた人の話だった。
書き手は石井光太氏。アジア、中近東の弱者たちを追い続けるノンフィクション作家だ。
彼の書いた『物乞う仏陀』(文春文庫、2008年初版発行)にある第4章「仏のような人」の132~133ページ。
数え切れない数の妊婦と嬰児。産み落とされた子供の産声をきけばきくほど、トイさんには戦争がどうでもよく思えた。たとえ戦争でどちらが勝利しようとも、こうして赤子が産み落とされてくる限りベトナムという国が無くなることはないだろうと思うようになったのだ。子供が生まれ続ける限りベトナムはなくならない、と。
現実に、アメリカ軍が日本・沖縄から飛び立った爆撃機から、まき散らした枯葉剤の影響で、戦後は障害児が多く生まれたが、このお産婆さんは、そんな赤子の多くを取り上げている。
それでも、当時取り上げた赤子たちが今のベトナムを支え、経済発展の担い手にもなっている。
日本人には好意的だというベトナム人だが、ベトナム戦争当時に学生時代を過ごした我々には、少々後ろめたい思いもある。
同世代の元国税庁長官が、ベトナムの大学で日本語による複式簿記を教えるプロジェクトを推進している。
これもひょっとすると、当時の学生時代の負い目を少しでも拭うための考えからかもしれない。
会計事務の担い手として、減少する日本の労働人口を横目に、ベトナム人に思いを込めたプロジェクトだ。
さらに、ベトナム人は「東南アジア」という言葉を嫌い、日本人と同じ「東アジア人」だという。
つまり、お隣のカンボジアやラオスの人々とは文化が違い、人種的な能力も優れていると主張する。
確かに、労働生産性は、カンボジア比較すると数段上のようで、識字率もかなり高いという。
ベトナムの人々が40年前まではアメリカとの戦争を勝ち抜いたことからも、民族的誇りは高い。
そんなベトナム人を雇い、入力センターを創設する税理士事務所も進出している。
元国税庁長官の進めているプロジェクトと他の民間会計センターが協力すれば、ベトナム人の雇用の機会も増えるだけに、日本人の人口減による会計業務担当者減にも対応できるのではないだろうか。
ひょっとすると、あのトイさんが取り上げた若者がそのプロジェクトの一員になっているかもしれない。
そんな思いで、ベトナムを訪問し、日本とベトナムの友好関係を見てみようと、考えている。
事業承継支援室長
大滝二三男
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