当支援室では、これまでに70件を超える事業承継の仲介をしています。
その中で、引き受ける先生方が必ず言うのが、「数年後にはお客さんは減っちゃうよね」
「もちろん、その通りです」とお答えします。
承継する顧客のみならず、自分で獲得した顧問先でも数年すればそのうちのいくらかは離れて行きます。
倒産もあれば、廃業もあるでしょう。現在のような景気では、事業を継続する気力も失うのも分かります。
ですから、当然、譲り受ける税理士さんが営業した顧客ではありませんから、減る可能性は大です。
それを防止するには、譲る側の税理士さんの協力が不可欠です。
引き継ぎの際に、解約を言ってくる顧客が多ければ、通常承継の対価も減ってしまいます。
ですから、それを防止できるのは、馴染みの先生や担当の職員の力です。
当支援室では、職員も併せて雇用を継続するように提案していますが、それを拒否する職員も中にはいます。
これまでに、承継契約、そして新しい体制も整い、承継日になって、その日に退職を言ってきた例があります。
それも最年長者の退職でしたから、担当する顧問先も多く、その影響は多大のものがありました。
その人の担当する多くの顧問先の解約が続き、顧問先を他の事務所へ持っていたのではないかとの疑念も。
これを裏付けることはできませんが、おそらくそのようなことが裏にあったに違いありません。
こんなひどい例は別として、通常でも例外なく、顧問先の解約はあります。
ですから、引き継げた顧問先から新たな顧問先を紹介してもらうような営業がどうしても必要です。
会計事務所の営業は所長しかできないという”常識”があります。
しかし、そんなことを言っていては、事務所は赤字経営になり、職員の雇用も確保できなくなります。
ですから、事務所一丸となって、営業努力する必要があるわけです。
職員に新たな顧問先を5件紹介してもらう作戦を立て、これを実行し、成果を上げている事務所もあります。
その職員は承継した職員たちで、顧問先の事情にも精通し、顧問先の社長さんにも”甘える”ことができます。
普段はそんな話はしない職員が、突如、「社長さん、お客さんを紹介してくださいよ」と一声。
「いつも忙しそうにしているから、紹介したくても紹介できなかったんだよ」とさっそく紹介された例も聞きます。
とにかく、営業戦略なくして、顧客の減少を食い止めることはできません。
新旧職員そして所長の頑張りが必要な時ではないでしょうか。
事業承継支援室長
大滝二三男