「事務所を継いでくれる若手の税理士さんはいませんかね」
ご自身の引退を考え始めた先生から、こんな要請を聞くとがたびたびあります。
果たして、どんな思いで若手の税理士を探そうとされているのでしょうか。
必ずそういう先生の口からは、「まず相性だね。眼鏡にかなえばすぐにでも渡しますよ」
本当にそうだろうか? これまでに若手税理士を職員として採用していないのだろうか。
いたとしたら、どうしてその人に暖簾を渡してあげなかったのだろうか。
先生と若手税理士との間には年齢差もあり、若者の考え方を承服できないことが多いのではないだろうか。
「私の考え方を理解してもらってから、」とも、言われます。
当然、その事務所の運営方針は、先生の考えから出ているわけで、これを無視することはできないだろう。
しかし、その考えを踏襲しなければならないということになれば、話は別だ。
後継者は自分の事務所を作るわけだから、いつまでも元所長の考えに固執するわけにはいきません。
また、「譲る」と言っている所長が、いつになっても本気で承継作業に進まなければ、後継者も不安になります。
現に、後継者として採用した30代そこそこの税理士に、数年間、具体的な話をしなかった先生がいました。
痺れを切らした後継者が所長の考えを質したが、その返事が「実は甥っ子が資格を取ったんだよ」。
後継者として採用された若者は、直ちに事務所を去ったのは当然です。
こんなひどい例はそんなにはありませんが、いつの間にか後継者候補が事務所を辞めている例が多い。
というより、所長の眼鏡にかなわなかったということが分かります。
しかし、そんな所長さんが果たして、後継者となるよう、それなりの教育をしていたのでしょうか。
この答えも多分、「ノー」でしょう。育てられなかったのではないでしょうか。結果として、辞めていった。
そんな経験を持つ税理士さんから、「後継者になるような若手税理士はいないだろうか」と言われても困る。
もう個人の時代は終わっています。一人親方から複数の税理士さんで業務に対応する時に来ています。
言ってみれば、組織の時代に入っているわけで、組織作りができなかった先生は、後継者なしのまま。
引退の時期が近づいても、辞めるに辞められない状況に陥っているのではないでしょうか。
それとも、やっぱり仕事が好きで、一人でできる範囲で生涯現役を続けていかれるのでしょうか。
引退せず、どうしても若者を思いのままにしたければ、お子さんに資格をとらえるのが一番。
しかし、試験に合格した息子さんや娘さんが、事務所を継ぐのでしょうか。これも、継がない人が実に多い。
その前に、父親の仕事ぶりを見ていた息子が、きっぱり「跡は継ぎません」と宣言する例もあります。
生涯現役を宣言した先生は気が楽。でも、ほとんどの先生が引退の時期を考えますから、悩みは尽きません。
でも、やはり後継者を作れないのであれば、見知らぬ他人に事業承継を考えるのも、一案ではないでしょうか。
ですから、当支援室では、若手税理士を後継者候補として紹介することは、ほとんどやっていません。
事業承継支援室長
大滝二三男
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