税理士事務所の事業承継において、移譲する先生は承継する先生のすべてを知ってはじめて、「事務所を譲ろう」と決意するのだろうか。答えは「ノー」です。
当支援室に相談され、「相手を探してほしい」と言われた先生のほとんどが、弊社の担当者からの提案にほぼ納得し、相手との交渉を任せる態勢になります。
そこでどのような相手の資料を求めるかと言えば、承継される先生のキャリアと事務所の規模、そして一部の先生は経営状況を把握できるものを要求されます。
ところが、この相手側の経営資料については、ほとんどの先生が無視されます。承継者の事務所の規模をみれば、およそ経営状態が分かるし、知りすぎると不安のほうが先行してしまい、決断が狂う、と言います。
特に税理士事務所の場合、経営状況を見る時に、移譲する先生の”取り分”の異常に多いことがあります。それに比較して、承継側のいわゆる”収益力”=先生の”取り分”が少ないケースがほとんどです。
そのカラクリを言えば、承継する側の事務所は、法人化しているケースが多く、事務所経費も個人に比べ高くもなり、同時に勤務税理士などを抱えていますので、どうしても人件費が大きなウエートを占めます。
そのほかでも、人材を確保するための、リクルート費用なども、個人事務所がハローワークなどを利用するのと異なり、次代を担う有能な税理士をヘッドハンティングするなどで、どうしてもコスト増となります。
とは言っても、それらの経費まで詳しく知りたいという移譲側の先生はほとんどいません。
自分の事務所を継いで、お客さんに迷惑をかけないだけの事務所の能力はあるのか、職員の雇用は確保できるか、そして対価の支払いは十分にできるのかといった条件に思いが行きます。
したがって、当支援室でお世話をした多くの案件で、細かい資料よりも承継する先生(法人の場合は代表社員)の人となりをみて、信頼ができると判断されて、話を進めていくことになります。
もし、相手が信用できないということになれば、両者の”縁談”は当然破談となります。
この時点で、「ほかの先生(税理士法人)を紹介してほしい」ということになれば、次の先生(税理士法人)を紹介する段取りとなります。
しかし、承継側の先生に対する事情聴取が上手くいかずに破談になったケース以外は、2人以上の先生を紹介した事例はありません。それほど、当支援室での承継者のチェックは厳しく行っています。
移譲する先生はただ一度の経験ですが、承継する側は何度でもチャンスがあります。
「事務所を譲る」腹を決めたからは、細かい点は見ないでおこうと、交渉に臨む先生の場合、契約までにかかる時間は非常に短くなります。「早く決めて、身軽に、そしてすっきりしたい」というのが本音のようです。
ただし、事務所の経営内容を把握し、隠れた先生の不良債権などがないかどうかは、しっかりと確認する必要はあるでしょう。当支援室もこの点については、十分に注意をしていますが、移譲する先生に確認を取ります。
もっとも、会計事務所の不良債権は、長期の顧問料の未収くらいで、そのほかで多額の借金があっても、これは個人が処理するべきことですから、事業をを引き継ぐ先生には、不良債権は引き継がれませんのでご安心を。
事業承継支援室長
大滝二三男
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