先日、この4年間で3名の税理士に事務所を預かってもらったという税理士(故人)の息子さんに会った。
”預かってもらった”という表現をするが、本来は預けることなどできない相談。
父親がなくなって、生活の道は会計事務所を”経営”するしか手立てがなく、仕方なく先生を探したという。
幸いにも、”理解のある”税理士が見つかり、その先生の名前で事務所を継続していた。
しかし、父親の、ひいては自分たちのお客さんが、その先生を信頼してくると、不安が一気に表面化。
さらに、お客を預けたはずの税理士自らが”主役”になってくると、先生との間もしっくりいかなくなった。
こうなると、税理士が報酬として要求する金額が次第に多くなり、当初の”給与”との考え方に大きな溝が。
日々の業務は自分たちがこなし、税理士にはいわゆる判子業務だけを依頼していたはずと思惑が狂ってきた。
そこで、先生にはお引き取りを願い、ほかの先生を探すことに。
この繰り返しで4年間に3人の税理士との、いわゆる名義借り契約が成り立っていた。
しかし、ここにきて毎年のように事務所名を代えなければならない事態に、お客さんからもクレームが。
昔からの顧客も、父親の名前で依頼を継続してきたが、たびたび変わる事務所名に我慢も限界に。
名義借りをする当人も、精神的にに苦痛を感じるようになり、当支援室のドアをたたいたわけだ。
当支援室では名義貸し・借りは認めていないので、事務所を完全に他の税理士に承継することを主張。
”良い先生”を紹介してもらえると、一縷の望みを持っていたようだが、その望みをいわば”粉砕”。
相談者とその母親(亡くなった先生の奥さん)にも十分説明し、事業承継をすることを納得させた。
その結果、相談者は引き続き、新しい事務所の職員として勤務することで、生活の道は確保された。
もちろん、名義借りをした”経営者”としての収入に比べれば、給与は少なくなるが、脱法行為からは解放。
これまでの状態が続けば、税理士法違反で”お縄”を頂戴することもあり得るわけ。
貸した方も、税理士法違反で業務禁止となる可能性もあり、そうなると二度と税理士には復帰できないことに。
それよりなにより、毎年のように勝手に名前が変わる税理士事務所への疑念もなくなり、お客さんもひと安心。
当支援室にはこのような相談が多くあり、名義借りが止められない事務所が数多くあることが分かる。
税理士会でもここ数年名義貸しには特に目を光らせ、税務当局もまた同じく厳しい姿勢で臨んでいる。
無資格者がお客さんに十分満足できるサービスを提供しようが、当支援室は脱法行為には賛同しません。
事業承継支援室長
大滝二三男
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