この7年間で、80件を超える事業承継案件の仲介をさせていただきました。
その中で、依頼された税理士が契約成立後に亡くなられたケースが、10件。
これらの先生は、3名を除いて、ご自身の病気を理由に承継を依頼されました。
その中のおひとりが、一昨日旅立たれました。享年64歳、団塊の世代の壮絶な死でした。
相談があったのは1昨年の12月。承継の具体的な方法などをお訊ねでした。
その時にも、顧問先、従業員そして家族に、迷惑をかけないことを第一にお考えでした。
肺の機能が侵される難病で、東京の大学病院で治療を受けていましたが、有効な治療法がありませんでした。
それだけに時間との戦いで、私もたびたび地方都市に赴きました。
昨年晩秋からは、東京での治療もままならず、地元の総合病院に入院し、治療を続けていました。
治ることのない病気で、時間との戦いでしたが、承継の事細かなこともすべておひとりで対応されました。
入院中も病室で打ち合わせをしましたが、付き添っていた奥様を心配させたくないと退室させる心配り。
「事務所のことは分からないから」と冷静な判断で、疑問点を一つ一つ解消されていきました。
承継に伴う問題点はすべて解決し、承継もスタート。ゆっくり治療に専念されている最中の旅立ちでした。
「こんなに早く」というのが、訃報が届いた時の気持ちです。同じ団塊の世代一期生として、考えさせられます。
しかし、顧問先、従業員そしてご家族にも、事務所経営に関する問題点は一切残されませんでした。
承継の思いを見事に達成された後の死ではなかったのではないでしょうか。 合掌
事業承継支援室長
大滝二三男