事務所の歴史が長くなると、職員の勤続年数も当然長くなります。
毎年給料がアップし、高齢者は若年層に比較して高額の給与となります。
新入職員も事務所に入ってから数年で、仕事はすべて習得する。
毎年同じ仕事の繰り返しなので、任された仕事ができれば無難に過ごせる。
もちろん、顧問先の要望に応えなければならないから、早々簡単ではない。
とはいえ、ルーティンワークであることに代わりはない 。
ベテランになれば、゛自分流゛で仕事をスムーズにこなせてしまう。
所長も一日も早く職員を指導しなくても、業務が回ることを期待する。
全職員が一本立ちすれば、所長は手も空き、時間的な余裕も出る。
ある程度収入が上がり、所得も増えれば、営業活動も手薄になる。
所長の子供の養育等の時間が終われば、さらに事務所拡大もしなくなる。
こうなると収入も増えなくなるが、職員の給与は年々アップする。
そんな慣習にどっぷり使った職員は、事務所の経理には当然無関心。
ここ数年はベースアップなしも少なくないが、事務所の収入は減少傾向に。
顧問先は倒産や清算で減り、顧問料も減額、経費はアップのダブルパンチ。
しかし、所長は充分資産も蓄えてしまったから、所得が減っても影響はない。
そんな状況を続けるうちに、労働分配率は6割を超え、中には8割事務所も。
いざ事業承継をしようとしたときに、従業員の給与がネックに。
職員の給与が収入の8割を占めるような事務所を引き継ぐ人は、まずいない。
引き継ぐ条件として、給与の減額か、リストラが必須となる。
顧問先の状況を把握している職員を、リストラするのは辛いところ。
顧問先だけを引き継ぎますということが通れば、それに越したことはない。
新しい顧問先を手にいれると考えた場合、古手の職員は必要ないわけだ。
ここまで労働分配率を上げてしまった経営者としての責任が問われることに。
高齢でも仕事ができる職種だけに、所長は職員の次の職場を意識すべき。
仕事を任せすぎて、いざ事務所を閉めようとしたときに、職員の反乱。
これでは何のために仕事を続けてきたのか分かりません。
定年のない職業だけに、自らの定年を充分考える必要があるハズ。
死ぬまで税理士でも、職員が路頭に迷うことがないようにしたいもの。
事業承継支援室長
大滝二三男