TPPが日本の税務業界に及ぼす影響はあるのだろうか?
1999年に弊社で『あなたもチャレンジ!米国税理士』という単行本を発行した。
その際、東京税理士会の国際部の幹部から「税理士は日本固有の制度で、米国にはないから、米国税理士という呼称はまかりならん」という抗議を受けたことがあります。
抗議を受けて、その抗弁をするため連絡すると、「税理士会まで来い」という。
とんでもない話で、抗議をするなら弊社まで来られたらどうかといえば、それはできないという。
そこで、新宿の某ホテルで会うことになったわけだが、そこで、双方意見を言い合った。
基本的に納税申告書の作成、会計帳簿の記帳代行などの業務を行い、米国の内国歳入庁の税務部門が実施する試験に合格した人なので、国税庁の試験に合格した税理士と同様に米国税理士の呼称を採用したことを説明。
これに対して、ある幹部から「日本の試験に比べて、米国の試験は易しすぎる。税理士という呼称は適さない」という意見も出されたが、他の皆さんはほぼ納得。その後はどういう呼称が一番良いか、検討に入ったが結果は出ず。
そのときにも、日本にいる米国税理士(Enrolled Agent)は在日米軍の確定申告書を作成するくらいで、それ以外の業務は安定した仕事はないこと。もちろん、税理士の業務を侵害することなどあり得ないことも納得。
12年経って、米国税理士そのものも日本人には希望を持てる資格ではないので、今ではそんな話もあったかなということになっているが、はたして今回のTPPではどのような扱いになるのだろうか。
米国から何でも進出してきたバブルの際にも、米国CPAが日本に会計市場を席巻するのではといわれたが、これは公認会計士が相互にその資格を認め、一部の試験に合格すれば国内でも同様の資格を認めたため。
でも、米国CPAだけの日本人が、国内で業務を継続できているかといえば、答えはノー。監査法人などで国際業務を担当することはできても、国内の監査はもちろんできないので、それほど影響なし。
税理士であればという疑問も出るが、こちらも日本の税法を全く知らないでは、業務はもちろんできない。現に米国で年25年以上会計事務所を経営していたCPAが全く日本では仕事ができず、再度米国に渡った例もある。
ということで、納税に関する業務はほとんど国内の税理士にしかできないことは明白。しかし、会計業務は独占業務ではないので、この分野での進出は十分考えられる。
現に、米国の会計業務はいまやインドやフィリピンにアウトソーシングされ、米国内では大手の監査法人が国内で会計業務を行っている例は少ない。
なかには簡単な相談などは、英語圏でもあるインドで直接電話で答えるようなシステム、言ってみればコールセンターがインドでも成立しているわけだ。幸か不幸か、流暢に日本語を話せる外国のコールセンターは現在はない。
しかし、TPPが承認されるときには、独り日本国内だけの業務展開はビジネスとして、おいしい商売として存在し続けるのだろうか.大いに疑問である。
事業承継支援室長
大滝二三男