先日、某税理士さんを友人の会社社長に紹介しました。
「うちの税理士さん、10年以上お願いしているのに、こちらの要望を一切聞いてくれない」
こんな話があって、「それならサービスの行き届いた税理士さんを紹介します」となったもの。
朝9時半、税理士とともに友人に事務所に到着。そこには社長の他、担当役員と経理マンが待ち構えていた。
挨拶もそこそこに、社長さんから同社の経理事情と現在の顧問税理士の対応について話があった。
言ってみれば、顧問税理士に対する不平不満を一気に吐き出す勢い。
すなわち、職員の交代は頻繁だし、銀行に提出する資料はこちらで作らなければならないし、経営に対するサポートなどは一切なし、併せて顧問税理士さんにはこの十年会ったことがない、などなど。
顧問税理士を代えようとする、社長さんたちが思うことほぼすべてを披瀝した。
そこで、新たに顧問税理士となろう税理士さんは、おもむろに「まず、うちが担当した場合のデメリットからお話します」と切り出した。
同席する私は「おや、そんなことを言ってもいいのだろうか」と思い、一瞬先生の横顔を見つめた。
同先生、そのデメリットを順々に説明していく。社長も役員もさらに係りの職員も真顔で聞き入っている。
特に社長は「わが意を得たり」といった表情で、役員や職員の顔をちらりとのぞきこんでいる。
先生はデメリットを話し終えると一呼吸し、担当役員と職員に質問。「デメリットを理解できたかどうか」と。
社長さん、「デメリットは分かったので、先生にお願いするメリットはどうなですか」と単刀直入に話す。
先生は職員に顔を向け、「うちのやり方は、、、云々」と、実務担当者に話を集中する。
最後に「会計は経営の羅針盤ですから、未来のことを知るためのものです。そのための業務です」
職員には未来の経営などの話は余計なことかも、顔は職員のほうを向いているが、本当の話相手は所長さん。
そして経理担当役員がその矛先。この人が税理士の変更には反対の立場にあった。
直接銀行交渉をするのは、中小零細企業では、社長の役目。その立場からは所長は強力な交代論者。
それでも、先生「うちのやり方を”試食”してから決めてください。それからで結構です」
といった具合で話が進み、現在同社の決算申告書のまとめを待って、税理士の交代と決定した。
具体的な内容までは触れないが、とにかく企業経営のための会計業務こそ税理士の仕事を売り込んでいた印象が残る。言葉だけでなく、それを証明する事例も紹介しながらの営業トークでした。
なかでも、まずデメリットから話を始めたその手法は、当支援室でも参考にしたいものだった。
事業承継支援室長
大滝二三男