税理士事務所の経営者にとって、会計法人の社長というのも退職金を積んでいくには都合がいい。
個人経営の税理士事務所では、せいぜい1年に840,000円の小規模共済金を積んでお仕舞。
30年掛けても25,000,000円。これに若干の利子が付くが、高級官僚の域には到底及ばない。
そこで会計法人を利用すれば、億という退職金をとっても、高額すぎると否認されることはまずない。
もっとも、それだけの資金をプールできなければ、当然否認されるであろうが、まずは安心。
しかも、個人経営であれば、奥さんは専従者として給与はもらえても、退職金はアウト。
それに対して、会計法人の役員に奥さんがなっていれば(名前を連ねていれば?)、退職金はセーフ。
もちろん、税理士法人であれば、退職金を手にすることもできるが、法人制度ができてまだ9年目。
社員歴9年では、それほど多くの退職金を認められるとは思えないので、現状では会計法人に軍配が上がる。
とはいっても、税理士法人で会計も扱っているので、会計法人と税理士法人を併設している事例は少ない。
せいぜい、税理士法人の下にコンサル業務や保険などを扱う子会社を持つのが普通。
こうなるとやはり、現状では高額の退職金を手にするには、経営期間が短すぎる。
退職金以外に功労金を出せるのであれば、割増しの退職金として上乗せできるが、果たして可能か。
やはり、個人の場合には、会計法人があれば、いざ事務所を閉鎖しようというときには使い勝手がいい。
ただし、国税局によっては、会計法人と税理士事務所との所得の按分を厳しく言ってくる例もある。
なかには、当局がその割合を決めていることもあるようで、先生方もその情報には耳を傾ける。
とはいうものの、会計と税務ではその業務量や職員の労働量から言って、会計法人にウエートがかかる。
さらに、職員全員を会計法人の職員として雇用し、税務を扱う部門では税理士事務所と併任させている。
給与もほとんどを会計法人から支払い、税理士事務所からはほんの一部を支払っているのが普通。
それでも、1対9といったような形で、個人と法人が収入を按分するところは少なく、3対7、4対6になっている。
1対9で按分している事例では、税務署から調査に来た際にも、その業務量を精査し、是認を受けている。
こんなわけで、法人から退職金をかなりの額受け取っても問題なしとなるようだが、どうだろう。
事業承継の際にも、個人事務所と会計法人の両方を引き継がなければ、意味がない。
会計法人も中身を譲って形を残すこともあるが、その際には会計業務は一切引継ぐ。
残るのは、継続の保険手数料や会計法人が事務所の所有者となっている場合、賃貸料収入のみとなる。
したがって、会計法人の代表を親族に移管し、税理士はすべての役職から降りて、退職金を手にするわけだ。
税理士法人がますます増えてくる傾向にあるが、会計法人のはどのような形になってくるのだろうか?
事業承継支援室長
大滝二三男