税理士事務所の事業承継で、他人である税理士に顧問先を譲渡する場合がある。
この場合、無償であれば、何ら贈与税はかからない。
不思議だ。中小零細企業の場合、親から子に経営権を譲渡すれば、株の評価で課税される。
一方の税理士が税理士である子供に、事務所の経営権を渡しても、何ら課税問題は起きない。
むしろ、有償で渡すと、顧問先を紹介してものとして、紹介手数料・雑所得の課税が起こる。
そうなると、子供が事業経営者として登録し、父親を補助税理士にすれば給料を払える。
この給料が言ってみれば、有償で事務所を売却した際の対価の支払いだという。
それも給与所得の控除も受けられるので、雑所得の認定より可処分所得は増える。
この場合、補助税理士として勤務していなければ認められないが、果たして実情はどうなる。
さらに、他人に有償で譲渡すれば、紹介手数料として雑所得の認定がされることになるわけだ。
親子間でどちらを選ぶほうが良いのか、一目瞭然だろう。
ほとんどのケースでは、子供にすべてを任せ、自分は隠居。現場からは離れていく。
そうでなければ子供の主体性は発揮できないからだが。
なかには、すっきり引退し、税理士資格も返上するケースもあるが、数は少ないのが実情。
創業者の目が光っていることで、顧問先も離れないというのがその根底にはあるようだ。
後継者が顧問先を開拓しないという現状を考えると、創業者も現場から離れないのかもしれない。
他人を後継者とした場合には、すべてを任せ、現場には出ないで、静かに余生を送ることが多い。
やはり、他人の経営に文句を言うのは避ける、と言う冷静な判断が働くのだろう。
ひょうとすると、”勝手にしやがれ、俺の事務所ではもうないのだ”とでもいいのだろうか。
それにしても、親子間で事業を継承できれば、こんなに幸せなことはありませんね。
事業承継支援室長
大滝二三男