金融庁と中小企業庁が共同の事務局として、取りまとめを行っていた中小企業の新会計に関するワーキンググループの意見が取りまとめられるそうです。その後、パブリックコメントが募集され、年内の公表となる段取り。
中小企業の会計となれば、税理士が一番知っておかなければならないはず。ところが、税理士はこの問題に至って無関心のようだ。しかし、この新会計、新年度からスタートするとなると、知らなかったでは済まされない。
しかも、中小企業経営者でもわかりやすい会計ということで、今の時代、だれもが会計ソフトなどを使うことができるので、中小企業の中で会計業務を行い、わざわざ税理士さんはいらないといった事態にもなるという。
ちなみに、この新会計の制度化により、金融機関が融資先になる中小企業者に要求する決算書は、来年の3月からこの新会計によるものでなければならなくなる。税理士さんが一歩遅れれば、月次顧問料を失うことにも。
そうなんです。顧問料という毎月の報酬がいただけない事態にもなりかねない。この会計の特徴の「簡単で経営者が使え、かつ適法なもの」からすると、毎月わざわざ先生に見てもらわなくても結構ですということになる。
さあ大変です。毎月の記帳代行、それも安定した、業績の良い、経理もしっかりしている、税理士さんにとって、とてもありがたい中小企業ほど、自社で会計業務をやってしまい、税金の申告だけを頼むといった事態になる。
しかも、会計そのものは、独占業務ではないので、一般の会社、例えば金融機関やその経理部門に在籍した定年退職者などが代行しても問題なし。「帳面見てあげるから、いらっしゃい」と営業しても咎められません。
となると、税理士さんにとって、この新会計をいち早く習得し、税務報酬と会計報酬をいただけるように努力しなければ、売り上げが落ち込むのは目に見えています。
そんなに厳しい状況にはならないだろうとほとんどの先生が考えているようですが、この新会計、業界を一気に変えてしまう可能性があり、油断は禁物です。
お布施のような顧問料の時代はとっくになくなっていますが、今回の新会計で、業界の内外での激しい顧客の奪い合いが起こり、「安い、早い、おいしい」といった吉野家的な新組織が業界に乱入してくるようです。
事業承継支援室長
大滝二三男