事業承継の対価を受領した場合、その所得は何所得?
税理士事務所経営は、営業権があると普通は考えます。
ですから、事業を譲渡した時には、営業権譲渡として処理する税理士さんが多いようです。
ところが、国税庁では、一身専属の医師、弁護士、公認会計士そして税理士には営業権がないとしています。
しかし、税理士法人の場合はどうなるのでしょうか?
税理士が集まって、法人を設立したのだから、当然同じように営業権はないというのでしょうか?
ところが、一身専属の税理士であっても、法人となると人格が変わりますので、営業権は認められます。
税理士法人が身売りをすれば、営業権の譲渡ですから、”株主”の税理士は譲渡所得(?)として申告?
この辺は税理士に聞いていただくとして、税理士事務所の承継の対価は雑所得となっています。
これは昭和47年の広島国税局からの質問に、国税庁が答えたもので、現在も変わっていません。
つまり、営業権はないのだから、顧客を承継先の税理士および税理士法人に紹介したもの。
その対価を紹介料と判断して、雑所得の認定をしています。
もっとも、営業権があるとしたら、税理士が死亡した時に、その息子の税理士が引き継いだとします。
この時には営業権を適正に評価をして、相続税の申告をする必要があるでしょう。
ところが、現実にはこの評価は行われず、もちろん相続税の対象ともなっていません。
中小企業の経営者が死亡した時にはそれなりの評価をするのに、不公平ではないかと声も聞かれます。
無理矢理、その疑問を解釈すると、昭和47年当時広島国税局管内の税理士さんの出身母体は税務署。
当時の相続税も基礎控除が少なかったので、営業権とすると、”先輩”たちの”ご遺族”に余計な負担が。
そこで、営業権なしとすれば、相続財産にはならないから、負担はなし。めでたしめでたいし。
もちろん、こんな話はあるはずがないが、最近は多くの税理士から雑所得の扱いに疑問が噴出。
それでも、国税庁は頑としてその判断を変えようとはしていないという。
事業を委譲する予定の税理士さん、この辺は一生に一度のことですので、しっかりご理解を。
事業承継支援室長
大滝二三男