税理士事務所の承継を親子でできるのは、果たして幸せだろうか?
そんな疑問を率直に感じる時があります。
歌舞伎の世界でしたら、親は師匠で、子はその弟子。親を超えるのは至難の業。
名跡を継ぐにしても、先代が生きていれば、先代はさらなる上の名跡を継いでいる。
職人の世界、例えば大工の棟梁になるには、それなりの技術と頭としての才覚も問われる。
ところが、税理士の場合、親である所長は果たして、子供にとって師匠なのだろうか?
法律的な問題を、親である税理士が、子供である税理士に懇切丁寧に解説するだろうか?
それとも所長としての業務を文書にしてまで、引き継ぐようなことをするかと言えば、答えはノー。
それなら、子である税理士は、親の事務所でどのような業務を引き継いでいくのだろう。
親が採用し、親とともに長年苦楽を共にしてきた職員が、子の税理士の言うことを聞くようになるのだろうか。
そして、所長はいつの時点で、金庫のカギを渡し、経営の第一線から身を引くのだろうか?
いつまで経っても、親は親、子は子で、親は元気なうちは肩書は渡しても、金庫のカギは渡さないだろう。
子である税理士が自分の力で顧客を営業し、親のお客より多くの顧客をつかんだとき、代が変わるのか。
そんなことはほとんど不可能だろう。いつまでも親の顧客を引き継ぐに違いない。
独立するのが、税理士になってからの夢。それも自分の城を持つこと。
譲り受けた顧客を守っているだけでは、子である税理士に本当の醍醐味を感じることは少ないであろう。
渡したい、渡したくない。そんな感情のもつれから、親子間が微妙になっているケースもある。
さらに、子の税理士が親の事務所から”逃亡”するケースも決して少なくない。
親の背中を見て、人生を考える。果たしてそうなのだろうか。税理士さんいかがですか?