東日本大震災を契機に、税理士事務所のデータ管理の問題が、改めてクローズアップされている。
先の阪神淡路大震災の時は、パソコンの時代と言うより、その入り口で、まだまだオフィスコンピュータが幅をきかせていたように思う。
あの大火災により、多くの税理士事務所も被災。その結果、多くのデータ、それも紙で保存されたデータが焼失。被災を免れたシステム会社のデータセンターに残っていたデータが、後日貴重な役割を果たした。
しかし今回は、事務所ごと津波により押し流され、パソコンも含め、サーバーなどもすべてを失った事務所も少なくない。こうなると、やはり、システム会社に残されたデータだけが頼りとなる。
ところで、今話題になっているのは、経済環境を見るとき、税理士事務所に管理用の大きな装備を設置しておく方が良いのか、それともサーバーを含め、システム会社に全面的に委託すべきではないかという議論だ。
事務所の経営者としてみれば、お客様の個人情報をそれらのシステム会社にすべて提供して良いものかどうか、悩むところ。しかし、現在の技術からすれば、個人情報をシステム会社が自由にできないことは明らか。
しかも、事務所にいながらにして、お客さんと情報を共有でき、さらにテレビ電話とその情報に関して、意見の交換もできるし、さらに金融機関ともつなげることも可能なので、サーバーなどを事務所におく必要もない。
事務所とお客さんがクラウドを通じて、自由に話ができるとあれば、それだけで顧問料が少なくなってしまうなどと考えるのは時代遅れ。今こそ、これらの情報網を利用して高度なサービスを提供すべき時に来ている。
事務所経営はコンピュータ導入の時に、事務所省力化が謳われたが、今回はコスト削減はもちろんのこと。データの安全管理の面からも、個人の力でデータを管理するより、その手の専門家に任せ、大事に備えるべきだ。
事業承継支援室長
大滝二三男