ここ4年間、毎年「自分の目で確かめ、能力不足ならば自分で育てるから。若い人を紹介して欲しい」と言って来られる地方の先生がいらっしゃいます。
今や、若い税理士さんのなかには、親の事務所を継ぐために、地方の事務所に残っている人はいます。その一方で、魅力のある仕事を求めて、都会に職場を求める若い税理士さんが圧倒的に多い。
それら若手の税理士さんたちが集まるのは、監査法人系の、いわゆるビッグ税理士法人。国際税務や移転価格税制、さらに連結納税やグループ税制、事業再編税制などにも通じていないと、出世はおぼつかない。
彼らの仕事ぶりは、モーレツサラリーマンといわれた経済成長期の若者たちと遜色なく、夜は10時、11時そして午前様と残業に継ぐ残業。そんな仕事の連続で、身体を壊す若者も少なくないようだ。
病気がちで、モーレツな仕事には体力的に無理だという若者でも、やっぱり出身地には帰ろうとはしない。親の介護がどうしても必要という人でないと、なかなか都会を離れようとはしない。結婚したらそれこそアウト。
田舎に帰っても、帳簿付けに毛の生えたような仕事しかないと勝手に思い込んでいる若者には、やむにやまれない家庭の事情がなければ、刺激のない地方の生活などもってのほか。
そんなことは重々承知の上で、若者を後継者に据えたいんだというのが、冒頭の先生。でも振り返ってみると、もし先生が後継者問題を真剣に考えていたなら、すでに40代後半から5候補者を決めておかなければ遅すぎます。
自分しか、事務所を切り盛りしていくことはできないと考えているような状況で、果たして後継者の育成ができるのだろうか。そんなに簡単に自分の城を明け渡すはずがないと考えるのが、常識。
でも、この常識が変わるような事態に、すでに突入しているような気がしないでもありません。それが税理士法人の拡大化と顧客の認識の変化。というのも、もう「先生だけが頼りだ」というような経営者は引退の時期に。
会計財務に精通した先生から経営に役立つ、生きた話を聞きたいという若い経営者たちが、新たな先生探しを始めているのも事実だ。やはり、経営のサポーターを買って出られるような税理士でないと、これからの時代は?
いかがでしょう? ご自身で若者を、コミニュケーションの苦手な若者を育てることができますか?もちろん、若い税理士は勝手に成長していきますが、彼らの行く先をしっかり見届けるだけの勇気がありますか?
事業承継支援室長
大滝二三男