東日本大震災から1週間後、東京都から「東京都暴力団排除条例」が成立、10月1日から施行される。
東京都が全国の地方自治体に先駆け、初の暴力団を排除する条例を策定したという。
この条例で一般住民に一番身近な例として、祭りなどで暴力団が運営に関与させないよう、求めている。
都民の責務として、①情報の提供 ②暴力団排除活動に参画または協力すること ③暴力団排除活動に自主的に、かつ相互が連携して取り組むこと、の3点をあげている。
さてここで、わが業界に目を転じてみると、暴力団が経営にタッチしている企業と知らずに、顧問契約を結び、税務申告等の代理をしている税理士さんもいるだろう。
今から30年以上前に、東京の盛り場のど真ん中に税理士事務所を開き、短期間に多くの新規顧客の獲得し、順風満帆のスタートを切った税理士さんの話。
あるとき恰幅のいい、背広姿の中年の、建設会社の経営者だという紳士が事務所に現れ、顧問の依頼があった。新規の顧客は誰でもいいと、直ちに顧問となることを了承。当時は契約書もなく、口頭での了承事項。
ところが、数ヵ月後、その社長さんが、当時は言い方をすれば、やくざの親分。とてもそんな風に見えなかったとその税理士さんは言うが、それからは顧問を辞めようと、話をするも、取り合ってもらえず、その後5年余り、無料で帳簿の整理から申告までを行い、やっとの思いで、”開放”されたという。
このケースでは、今回の都条例の「都民の責務」を当てはめてみると、まず①で、直ちに都または暴追都民センター等に情報を提供しなければならず、②では、直ちに顧問契約を破棄し、③では税理士仲間などと連携して暴力団の排除に努めなければならないから、彼の先生の行為はすべて落第。
そして今、果たして、暴力団と関係を持っている企業を一般の税理士さんが知ることができるのだろうか。顧問先の拡大のためにインターネットで積極的にPRを活動を行っている事務所に、そのマル暴企業は来ないのだろうか。
通常、暴力団のフロント企業と言われる企業がかなり多く存在するというが、ほとんどの税理士さんが顧問先が暴力団である認識しているその数は、果たしてどれくらいあるのだろうか?
また、暴力団の顧問弁護士がいるように、税理士さんや公認会計士にも暴力団と関係の深い資格者もいるというが、税金は暴力団だからといって払わないで済むことではないので、当然彼らと関係のある先生もいるだろう。
弊社に事業承継を依頼された先生方で、それらの反社会的勢力と関係がある人はいないと信じているが、こればかりはその道の専門家ではないので、100%なしと断言することはできないのが正直な話。
もしも、それらに関係する税理士さんを紹介し、事業承継の結果、新しい先生が暴力団関係者である企業を顧問先とした場合、弊社としてはどのような対応をすればよいのか、事実答えは出ない。
税理士さんに「先生は暴力団と付き合ってますか?」「暴力団関係の企業はありませんか?」と尋ねても、答えは「付き合ってませんよ」「そんな企業ありません」と答えるに違いないでしょうね。今回の都条例は誰が創案?
事業承継支援室長
大滝二三男