税理士事務所経営にとって、厳しい状況が続き、顧客が減るのが大半の事務所。
特に小規模の税理士事務所では、この傾向が強い。
各地で大型店舗の進出や人口流失により、商店街がシャッター通りになり、商店は閉鎖。
これだけでも、顧客が減少するわけだが、製造業も日本脱出で、その取引先も大幅減少。
中小零細企業を相手にする税理士事務所にとっては、これから数年間は非常に厳しい状況。
アベノミクスや法人税減税などの恩恵は、大企業だけで、中小零細企業にまでは回ってこない。
さらに東京一極集中で、地方都市はますます疲弊する一方。
痴呆再生を叫んでいる政府も、果たしてどのような政策を講じようというのか、定かでない。
こんな中で、事業の縮小あるいは廃業などは確実に多くなってきているのも事実。
こうなると、税理士事務所も営業努力を所長一人でなく、全従業員が必死にならざるを得ない。
これまでの税理士事務所は、顔である所長個人の力だけで、商圏の拡大を図ってきた。
それも顧問先からの照会が主流だったから、”増えない顧客”から新たな紹介も出てこない。
ある程度の都市であれば、新設企業の登記簿閲覧などの情報を下に、DMなどを発送できる。
現にそのDMの効果もあって、着々と顧客を増やしている元気のいい税理士法人もある。
しかし、税理士会や仲間の評判などを気にする税理士には、このような営業は向かない。
やはり、お客さんからの紹介だけが頼りと、じっと待つしかない。
こんなムードの中で、もう終わったとばかりに、他の職業に移っていく税理士はいるのか。
これまたいないので、規模を縮小し、自分一人でできる限りの事務所を続けるという人も。
こんな状況故に、事業承継を希望する事務所も非常に多くなってきている。
引き受け手の競争は、非常に厳しいのが実情。
やはり状況がそうさせるのか、引き受け手自体が、非常に慎重に対応するケースが増えている。
顧客情報は確実なものなのか、未収金以外の隠れ負債などがないか、などチェックは厳しい。
これとともに、引き渡す側も、受け手の財務状況の公開を要望。
話がまとまるまでの期間が、ここ数年より確実に長くなっているのも、こういった事情か。
浮かれ景気の中での事業承継ではないだけに、慎重には慎重に。でも、決断は素早くだ。
事業承継支援室長
大滝二三男