税理士の仕事って、企業の経営者・経理担当者とコミュニケイトして初めて前に進むんですよね。
税法に学問的に精通していても、生きた経理を処理できなければ、なんの役にも立ちませんよね。
先日、「税法なんて大嫌い、税務申告書の作成なんて、やりません。」こんな税理士さんに会いました。
いわく、「決算書を作成し、申告書を作成することは、慣れた職員であれば、十分できます。我々より早く、正確なものを作れますよ。そのためのソフトがどこの事務所にもありますからね。」もちろん、チェックはしますが。
ところが、事務所経営のキャリアが長くなり、規模が拡大するに従い、お客様との”全方位外交”の前提が崩れ、所長としてお客さんに会う機会が減少していく。
そうなると、職員が所長の事務を代行する時間が長くなり、自然と職員任せになっていく。職員が”力”を付けていく瞬間だ。所長があるとき気づいて、事務所を振り返ると、職員の発言力が非常に大きくなっていることも。
職員とのコミュニケーションが取れなくなっていく瞬間がやってくる。「我々がしっかりやれば、所長には安心していただけますから、」と言うものの、その言い分を鵜呑みにすることはできない。
税務が大嫌いな税理士さんは、税務実務は職員にしっかりやらせ、ご自身、実はお客様とのコミュニケーションにほとんどを費やしているという。「人生経験の豊富な先輩たちと話しているほうが、いいですよ」と笑う。
お客様との絆をしっかりしておけば、職員が以下に実務に長けようが、関係ありませんというわけ。「私の知らないところで、話が進んでいたことなんて、一切ありません。」
どんなお客さんとも話をしっかりしておくという。「会社の規模で会う、会わない、なんて考えたこともありません。皆さん、私が選んだお客様ですから」と、やはり、絆をしっかりしている人には成功の道が開かれている。
そんな方でも、後継者にはご苦労され、果たして誰を後継者にすればいいか、悩む毎日だと言う。「世界中を旅行して歩きたいので、早く辞めたい」と”贅沢な悩み”をお聞きしたが、正直うらやましく思う。
事業承継支援室長
大滝二三男