昔から「親の背中を見て、子は育つ」と言われ、親として子供に恥じない仕事をしていかなければならないと、教えられてきた。
同時に「親がいなくて子が育つ」と、これをいいことに、仕事人間として、朝、家を出たら、深夜、いや日付が変わるまで、まさに家族中が寝静まったころに帰宅することもしばしば。
子供は親の姿を休み以外では見ることがない。こんな家庭が高度経済成長時にはほとんどあったはず。もちろん、週休二日制ではなく、土曜日は半ドン。仕事が終われば、マージャンなんて、仕事にかこつけて遊んでいた。
そんなサラリーマンとは、比較にならないのが、中小企業の経営者、そして一部の士族。彼らは自らが作り上げた事業を子供が継ぐことが当然とばかりに、仕事に熱中。結果、その子供たちが跡を継いでいった。
それも、バブルに終焉まで。その後は中小企業経営も、中国の世界の製造工場化で、よりコストの安い中国への進出などで国内は空洞化。残った中小企業は衰退の道をたどる。
その経営者の子供たちも親の苦労を知り、自宅を担保に入れ、資金繰りに奔走する、その姿を見るに付け、そんなにまでして、後継者として仕事を続けるより、サラリーマンとして気軽に生活したいとなる。
ところがこの20年、サラリーマンの道も狭く、何時来るかも分からないリストラに悩まされ、大きな買い物をするできず、家庭を築き、家を持つという最低限の夢も描くことができないような状況に追い込まれている。
税理士業界も中小零細企業が廃業や中国などの海外への進出などもあり、大変厳しい状況に追いやられつつある。さらに個人の力では解決できないような難解な税務処理も出てきており、個人事務所から脱皮する時に。
若ければそのような対応もいくらでもできるが、年齢を重ねると、頭脳も硬くなり、なかなか新しい情報が正確に理解された形で入りにくくなる。「わたしもそろそろかな」なんて考える税理士さんも増えつつあるようだ。
そんな姿を見たこうけいしゃたちは、しかも親に言うとおり資格を取得したものの、果たして自分が税理士事務所を経営することに向いているのかどうか疑問に思う人も少なくない。
個人に時代から集団の時代になりつつある税理士業界のなかで、サラリーマンとして税理士業務を追及すことに多くの若者たちが向かっている。もちろん、時代がそうさせているのだが、親に世代とここが大違い。
「親の背中を見て育った」結果、後継者として税理士事務所は継がず、都会に出て、難しい税務処理などに対応できる税理士法人などで、将来のパートナーを目指して、日々努力することになる。
これからの時代、ますますこんな状況になっていくだろうし、税理士法人は監査法人のように一部のビッグ法人が10年後には税理士業界、税務の業界を席巻していると予想される。いかがでしょうか?
事業承継支援室長
大滝二三男