「先生、昨日おっしゃっていたことと違いますが、、」
直接お会いして、事業承継に関する説明をゆっくり時間をかけてお話し、納得していただいたのですが、翌日、電話で確認してみると、面談する前の先生自身が考えていた結論しか返ってきません。
私がお話した方法で、安心して事業承継をしていただけると確信し、先生も納得したのですが、一晩経つと、先生は自分が気に入った方法でやると頑張ります。実はよくある話です。
ご高齢になられた先生の頭の中には、他人の話を受け入れる余裕はすでになくなっています。「それなら話を聞くことはないじゃないか」なんて言わないでください。先生は、ご自身で承継先を見つけられないのです。
申し訳ありませんが、このような先生にはご家族の承認などが必要になっているのですが、事務所のことは自分でと決めているので、奥さんに協力を求めることはほとんどできません。「あなたが決めてください」というわけ。
ご相談はされるのですが、われわれの対策は受け付けていただけません。
改めてご説明すると、「ああそうだったっけ!」となるのですが、また数日すると、ご自身が考えた通りの方法に戻っています。こうなりますと、お相手を紹介したくとも、できない相談になります。
そのうち、「そんなことを頼んだ覚えはない!」ときます。ここまで来ると、われわれのコンサルは終了です。つまり、先生には少々ボケのはしりがあり、このままの状況では承継まで、到底無事に着地することはできません。
「やっぱり、君の言うとおりにするよ」と言っていただければ、いいのですが、このような状況まで来ると、お相手の先生も「お客様へのサービスはしっかりやられているのだろうか?」と、承継後が気になります。
「どうも、心配だ。先生は大丈夫だろうか?承継してもお客さんが離れて行っては、元も子もないしね」。承継先の先生の気持ちも正直です。費用対効果を考えると、不安が募ります。
それにしても、ボケるというのは、新しい情報は正確に入らないものの、古い情報は忘れない。そのために、永年付き合ってきた税務の仕事はこなせる。お客さんも税務署対策をやってもらえば結構と大きな期待はなし。
こうなってくると、事務所自体が”枯れて”来るから、承継先も疑心暗鬼になれざるを得ないところ。結論から言えば、こうなる前に、ボケが出る前に、引き際をしっかりしておきたい、ということになりますが、いかがでしょう。
事業承継支援室長
大滝二三男