税理士事務所の経営者の先生を見ていると、中小企業の社長さんたちと同じ顔が見えてきます。
どんな規模の企業経営者でも、後継者には血の繋がった子供に企業経営を託したいと考えるのが常。
たとえ、その子供に能力がなくとも、冷静に自分の創業した企業の後継者に向かないと、判断できる経営者はそうそうはいません。
資格ビジネスの税理士事務所でも、子供が資格を取得できないため、資格者を婿や嫁にと、経営者たる税理士の親が、無理無体を演じるのは”常態”のようです。
確かにそれだけおいしい仕事なのかもしれませんが、資格がなければできないわけですから、可愛いお子さんでも税理士試験の合格できなければ、税理士事務所の後継者として”家業”を継ぐことはできません。
もっとも、資格がなくても、雇われ税理士を上手に使って、商売を続けている資格なき後継者も確かにいらっしゃいます。”政経分離”ではなく、”税経分離”(こんな言葉ありませんが)ですかね。
父親が立派な事務所を産み育て上げたものの、後継者たる子供たちが資格を手にすることができず、事務所の運営に創業者たる父親の”血筋”を頼りに、経営を継続していますが、税理士を雇わなければ成り立ちません。
そんなことを続けるうちに、雇われ税理士が反乱を起こすトラブルなど、弊社にも多くの相談が寄せられています。どちらが強いかと言えば、資格者に軍配が上がります。そういうビジネスですから。
でも、資格なきお子さんが、ビジネスマンとして優秀であれば、資格者との争いも起こりません。やはり、先生のお子さんもおごらず、誠心誠意商売を続けていれば道は開けます。結果、人は付いてきます。
先生がなくなった後でも、お子さんが後継者になれなくとも、しっかり経営を続けている事務所もたくさんあります。それは、従業員の教育ができていた事務所です。彼らも運命共同体の一員です。
事務所が消滅することは、職員の雇用も失われますから、彼らも必死です。先生の遺族が無理無体をしなければ事務所の承継もスムーズになり、事務所の伝統も職員とともに守られます。
とはいうものの、子供だけが後継者になるというのは、ここにきて通じなくなってきたようですね。そろそろ税理士事務所経営も”家業”から脱皮しなければならないご時勢ですかね。
事業承継支援室長
大滝二三男