会計事務所で定年制を敷いているところはどれほどあるでしょうか?
当事業承継支援室に数百を超える事務所のご相談から分かったところでは、若い経営者の事務所では定年制を明確になっているが、高齢の所長さんの事務所ではほとんど定年制を敷いないとうことです。
なかには、勤務暦40年以上の60数歳の職員ばかりの事務所もありましたし、しかも年功序列のいい時代に働き盛りを迎えていましたから、給与も会計事務所に勤務するサラリーマンとしては高いほうでした。
そのため、高齢の所長さんの財布事情はいい時期を通り越して、自分の資産を取り崩してまでも毎月の給与を支払い、翌年の源泉税の還付で何とか生活しているという所長さんも間々見受けられます。
こうなると、税理士事務所経営は職員を食わせるためだけのために継続され、所長さんはすでに子供も育て上げ、資産もそれなりに蓄えていますから、チャンスがあれば事業承継をしたいという思いも理解できます。
このような事務所からご相談を受けると、当時業承継支援室では、事業承継をする若手の先生のために「できることなら、高額の給与を支給され、もう戦力として働く気力のない方は引き受けたくない」と申し上げます。
もちろん、立派な職歴で顧問先の方からも信頼され、間違いのない監査業務をこなし、事業承継後も若い先生に協力して、事務所を盛り立てていける職員の方には何より働き続けて欲しいと望まれますが、やはり年齢という壁はどうしても存在するのも事実です。
一般企業と比較して、給与は決して高いものではありませんが、会計事務所勤務が40年も続いている人たちは決して給与以上の生活をしようと無理をせず、しっかりその範囲内でつましい生活ができた方々であることも事実。
これらの人たちに向かって、「もお歳ですから、そろそろ身を引かれていかがでしょうか?」なんて面と向かって言えませんが、やはり、事業承継する方のことを考えると、事前に定年制をしっかり作っておいて欲しいなと考える次第です。
そんな歳に近づいてきた本人自身がしっかり定年制を守らなければいけないのですが、後数年先にはその時が来ます。そんな自分が事業承継の仕事をする。身を引く先生の気持ちも分かる体験も積んでいますし、職員の気持ちも分かります。
さてさて、定年制だけが解決策ではもちろんありませんが、他人の人生をもう一度考える時に、先生とともに歩んできた高齢の職員の方々の脇役としての人生もまた考えさせられるケースも実は多いものです。
事業承継支援室長
大滝ふみお
でした。