税理士法人にとって、社員税理士は必要不可欠のポストで、会社でいえば社長以下の取締役。
社員税理士が2名で、初めて法人設立ができるわけだが、事務所は同じ所になくても良い。
というわけで、すでに事務所を立ち上げている税理士2人が、法人として各々の事務所で業務を続けられる。
この二人に課される義務と言えば、
損害賠償を請求される事態になったときには、連帯責任を負うこと。
それも無限だから、一方の社員税理士が責任を果たせない場合には、他の社員税理士が連帯して払う。
個人事務所にない連帯責任が課されることが、大きな不安を持つ税理士が、法人化に二の足を踏む理由だ。
この不安を払拭しない限り、法人に衣替えすることはできないが、これが事業承継にも高いハードルに!
ところで、税理士の損害賠償と会計士のそれでは、その額は月すっぽんほど、大きな差がある。
だから、税理士に対する損害賠償 に関わり、責任が果たせずに破産したという話を耳にしたことはない。
確かに、税理士法人が損害賠償金を払った事例はあるが、社員税理士個人が負担した例は聞こえてこない。
しかし、事業承継の際に事業を譲る先生が社員税理士にならない場合、その事務所に支店は開設できない。
譲る先生の事務所を使い、法人の支店を開設すれば、顧問先にも迷惑がかからないし、客離れも防げる。
しかも、社員税理士になれば、事業を売り渡したなどとの憶測を防げるが、それがダメなら支店はアウト。
こうなると、個人事務所は閉鎖して
所長以下全職員も、引き受け手の事務所に移動する必要がある。
同じ地域の事務所であれば、お客にも抵抗はないかもしれないが、離れた所ではお客もついては来ない。
これまでの事例で、譲り渡す先生が社員税理士に抵抗があり、所属税理士になったことはある。
このケースでは引き受ける税理士法人に、たまたま社員税理士に適役な税理士がおり、問題は出なかった。
他のケースでは、社員税理士にさせたくとも、経験や能力から判断すると、経営責任は負わせられない。
したがって、第一候補の法人は事業承継を諦め、他の税理士法人に譲り渡さなければならなかった。
相思相愛であれば、何とか社員税理士に就任してもらい、連帯責任も免責にすることももちろん可能だ。
引き渡す税理士が、損害賠償事件に関わる可能性のある人物であれば、それは当然断ることになるだろう。
もちろん、損害賠償責任を果たせない税理士法人を、引き受け手として紹介しませんから、ご安心下さい。
事業承継・M&A支援室長
大滝二三男