若手の税理士さんからこんな電話がありました。
過去に税理士事務所に勤務していた職員が、お客さんを連れた独立したようです。
もちろん記帳代行は資格がなくてもできますが、税務を扱うことはできません。
このようなケースでは、税理士と提携して、税務は税理士が担当する形を取ります。
ところが、今の会計システムでは税務申告書まで作れてしまうので、税理士の仕事はチェックのみ。
決算書から税務調整をして、税務申告書を作るのを税理士が行っていれば問題なし。
しかし、会計法人が顧客を維持し、会計業務を行っている場合には、勇み足で税務にも手を伸ばしていることがほとんど。
過去に、国税OBの父親が元の同僚と一緒に税理士法人を設立し、資格のない子供たちを会計法人の役員としていたケースがあります。
そして、父親が死亡すると、税理士法人に参加していた国税OBの税理士が、会計法人で税務までも処理しているのは違法であると指摘。
それは正しいのですが、最終的に税理士法人の経営権をつかんだ社員税理士が、会計法人を解散させ、すべての職員を税理士法人の職員とし、元同僚の子供たちをヒラ職員にしてしまったことがあります。
国税OBの税理士が会計法人(あるいは個人)と契約し、税務書類に判を押す、いわゆる名義貸しを行っていることが把握することがありますが、無理やり経営権を掌握してしまったケースには驚きました。
しかし、元税務署長の税理士だけに正義感からそのような行動に出てしまったのでしょうが、その対価については少額を払っただけだとも聞いています。
でも今回の相談者の場合には、そんなケースがあるということはご存じありませんし、会計法人の経営まで深入りしようなどとも考えていません。
ですから、税務申告書類等は税理士として責任を以て、自らが作成する。契約に際しては会計法人との責任分担を明確にしたうえで、将来のリスクを避けるよう、お話をした次第。
顧問先の脱税などでも、顧問先からの情報を的確に把握していなければ、申告書に疑義が生じてもそれを見抜くことはできません。そんなリスクを極力避けられるような契約を結ぶようお伝えしました。
でも、本当は自らがお客さんを獲得し、そのお客さんを指導する中で、会計処理、税務処理をすべきところですが、なかなか顧問先が増えない若手には、少々冒険もしてみたいのでしょう。
それも前任者が高齢になり、会計法人が人探しをするのも分かりますが、くれぐれも若手税理士さんの将来をつぶすようなことがないように願うばかりです。
事業承継支援室長
大滝二三男