税理士さんが長年ご苦労をされてきた事務所、それも定着率が良い。
高校を卒業して以来、先生とともに40年以上働いている職員もいる。
酸いも甘いも分かった者同士が、築き上げてきた事務所でもある。
しかし、あまりにも定着率が良いために、若い人が入ってこなかった。
というより、その必要がなかったというのが、本当の話。
所長にしてみれば、日々の業務で任せきりにもできる職員ばかり。
そうなると、若い人を入れて指導する時間がもったいない。
そうこうしているうちに、所長も歳を取り、職員も同様に老齢化してしまった。
定年を決めてない事務所が多いが、今回の事務所も定年制はない。
働けるだけ働いてほしいと所長が願い、実際にその通りとなっている。
ところがここに来て、気が付いてみれば、職員の平均年齢は60歳を超えていた。
年齢で仕事をするわけではないが、顧問先の担当者より年上の職員がほとんど。
どう見ても自分の子供ほど年齢の顧問先担当者を相手にするようになってしまった。
こうなると、顧問先企業の社長が相手にするのは良いが、経理担当者は少々迷惑。
もう少し若い人で、自分の主張も聞いて欲しいという人も出てくるようになった。
というのも、顧問先では60歳定年があり、それ以降は管理職から嘱託になる。
それを見ている顧問先の担当者は、いつまで年寄りの事務所の職員と付き合うのか?
もういい加減に若い人を担当につけてほしいという声も聞こえてくるようになった。
同時に、顧問先の社長からは「先生、いつまでやられるのですか?」そんな質問も出る。
顧問の税理士にもしものことがあれば、会計業務は一寸先が闇の中小企業がほとんど。
それだけに、税理士の健康状態が気になり、場合によっては若い税理士に契約変更。
今回仲介の依頼を受けた税理士さんは70代前半だが、事務所員全員が60歳を超えていた。
事務所の経営上も年功序列の給与体系で、最終的に残る先生の所得は、職員給与以下。
こうなると、お客さんのことを考えた時、若い先生へのバトンタッチが正解だと判断。
自分で後継者を育てられなかったことで、仲介以来となったが、これのケースが多いのは確か。
幸い今回の依頼者は法人の支店となることに抵抗がなかったので、短期間で相手が見つかった。
それでも、高齢の職員たちの処遇には引き受け手も悩んだが、従来通りの勤務で了承。
給与相当の仕事をこなしてもらえば、歳は関係なしとの判断。
そうなんですね、若ければいいというのは、業界が違うのでしょうね。
でも、優雅な老人として過ごせるようになるのは、果たしていつになるのでしょうかね?
事業承継・M&A支援室長
大滝二三男