70代の税理士さんはそう言うが、奥さんは納得しない。
資格挑戦中で残り一科目合格すれば、無事税理士登録可能の職員もいる。
この人は今年の8月の試験で、多分試験をクリアするだろう。
そう決めている先生は、病もあって、引退にはあっけらかんとしている。
これまで職員には十分貢献してもらった、だから、渡すのは当然のこと。
試験に合格する予定の職員が事務所を立ち上げ、そこで働けば良い。
税理士がいなくなれば、仕事ができないのだから、そうすべきだという。
常日頃から、お客さんを持って行っても良いよ、と公言しているのだ。
いまさら、「他の税理士に譲るから、そこで働け」とは、言えない。
新所長と相性が合わない職員には、新しい職場を探してあげたい。
数人の職員が、゛そのあと一科目゛の職員と良い関係ではないという。
所長夫妻は、これらの職員のいく末を案じて、相談にやって来た。
自分達でやっていける人は、そのまま自由にやってもらう。
当然対価をもらうつもりはない、これまでの貢献を十分評価するから。
でも、行く先が見つからない職員を、放り出すわけにはいかない。
実に思いやりのある所長夫妻、これまでに聞いたことはあまりない話。
当支援室で、実力を十分発揮できる職場を提案することを約束。
ただ、奥さんとしては、大部分のお客を持っていく試験合格予定者には?
口ごもり、明確には自身の意見を言われなかったが、不満が残るようだ。
しかし、所長の意思通り、職員の就職先を当支援室に依頼することに賛成。
所長の許可の下、顧客とともに移籍する職員を採用できれば、万々歳。
さて、どこの事務所を紹介するか、思案のしどころだ。
事業承継・M&A支援室長
大滝二三男