勤務税理士には良い話なのだが、なぜか事業承継には応じません。
数年前のこと、そんな状況に追い詰められた税理士からの依頼が来た。
所長は勤務税理士と、税理士法人を設立し、承継するプランを立てた。
日頃から真面目に業務をこなす職員2名なので、社員税理士にする。
設立後しばらくは、所長が代表社員として、経営責任をとる。
その後は2名の社員税理士に徐々に引き継ぎ、引退する予定だった。
そのプランを職員に話すと、2名は何故か反応が鈍い。
二人とも独立願望があり、自分の事務所を立ち上げたいと考えたのか?
しかし、独立するには、まだ自信がないとはっきり口にする。
それなら、しばらく社員税理士として勤務し、引き継ぐのも好都合のはず。
だが、問題は日頃の事務所事情が、一番の理由であったことが判明。
というのも、事務所の権力者は実は先生の奥さんで、彼女が意見が最優先。
社員税理士という責任ある立場になっても、奥さんには対抗できない。
所長が外回りが多いので、事務所は奥さんがすべてを゛支配゛していた。
先生は事業承継の必要性を強く感じていたので、職員を説得した。
しかし、奥さんが事務所にいる限り、引き継ぐつもりはないというのだ。
数ヶ月かけて説得を繰り返したのだが、職員の気持ちを変えることができず。
その結果、法人の支店になることで、事業承継は実現した。
奥さんは勤務したままの支店化だったため、2名の税理士は退職。
というものの、所長には文句がないので、退職後も仕事を手伝った。
当然、税理士法人の本部の許可を得ての話だが、所長は大助かり。
本部の税理士が関与先に慣れるまで、実に上手く仕事が回った。
ところで、権力者の奥さんはどうなったのでしょう。
そう、先生は奥さんには引導を渡せず、本部からの゛指導゛が奏功。
゛権力者゛の奥さんも、法人の支店の一人の従業員に。
引き続き勤務する職員たちも、この間゛静かに゛状況を見守った。
結果、すんなりとはいかなかったが、数ヶ月後には奥さんが退職。
所長は、その後数年間支店の社員税理士として残り、顧問先も安心。
実務は法人からの税理士が担当、職員たちも職務を全う。
まあ、奥さんには指導ができない先生、こんな例もあるんですね。
事業承継支援室長
大滝二三男