税理士業界では、今や法人でなければ生き残れないという風潮が強い。
創業者が代表社員となり、勤務税理士が社員税理士になるケースもある。
もちろん、資格のある子弟がいれば、親子で法人を立ち上げる。
中には気の合った税理士が集まって、法人成りすることもある。
しかし、一人で業務が完結する税理士は、法人は必要なしとする人が圧倒的。
というのも、社員税理士の無限連帯責任に対する抵抗があるから。
他人の不始末まで背負うのは許せないので、法人にはならないというわけ。
ただし、社員税理士の一人が非違等により、処分されても法人には及ばない。
あくまでも、税理士個人が責任を負うことになる。
昨年の国税庁から発表された処分でも、社員税理士個人の業務停止があった。
この税理士が社員税理士を務める法人には、一切処分は及ばなかった。
税理士3人で組織した法人なので、一人が処分されても要件は満たしていた。
ただし、法人自体で非違行為をしていると認められれば、その限りではない。
その一方、監査法人の場合は、法人の代表である公認会計士は処分なし。
監査業務自体は組織で行うことになるので、組織そのものが処分を受ける。
例えば、業務禁止となれば、監査法人自体が動けなくなる。
その結果、組織は解体となり、監査法人は消滅することになる。
しかし、公認会計士の資格には、影響がない。
つまり、組織を代わり、新たな監査法人での業務をこなすことも可能。
もっとも、非違行為をした監査法人の代表者が、他に移ることができるか、
やはり、公認会計士としては大きな汚点を残すわけだから、アウトだろう。
ところで、同じ公認会計士が、税理士としては業務を続けられるのか。
これは当然オーケー、公認会計士個人としては処分されていないから。
税理士としても処分を受けているわけではないので、一切関係なし。
監査法人の代表として処分された公認会計士が、税理士としては無傷。
何とも不可解だが、資格のあり方に問題があるようにも思えるのだが、さて
いずれにしても、組織が拡大する税理士法人の法令違反には監視の目が光る。
事業承継支援室長
大滝二三男