税理士事務所は、所長が作り上げた゛作品゛と言っても、言い過ぎではない。
主役である税理士個人の人生そのものが、その事務所に詰まっている。
その助演者の一番手が、人生のパートナーである配偶者だろう。
その゛作品゛を何時までも手もとに置いておくには限界もある。
資格ビジネスの宿命で、資格のない家族に゛演技゛を続けることは許されない。
主役が引退しなければならないとき、助演者達も身を引くことになる。
まさに、家族で築き上げた舞台を手放すことになるわけだ。
主役である税理士が肚を決めたからといって、舞台から去りがたい。
しかし、事業を承継するからには、主役交代は絶対の条件。
交代する主役も自分で決めたのだが、様々口を挟みたい。
長い時間をかけて、経営の面倒を見てきたお客さんも自らの゛宝物゛。
顧問先の種々の問題点も指摘し、適切なアドバイスをしてもらいたい。
事業を継続できたら、その時々で親身な対応もやり続けられる。
そう考える主役だが、肚を決めたら承継者の邪魔になってはいけない。
でもでも、一日でも長く付き合っていたいというのが、本音。
体さえ言うことが効けば、歳に関係なく、舞台からは降りる気はない。
そこで、゛助演者゛として、舞台に置いてもらいたいと交渉する。
邪魔にならなければ、それも良いでしょう。
長い付き合いの顧問先も先生がいることで、継続性を信じる。
代わったばかりの税理士に相談をするのは、すこし抵抗を感じる。
その点、顧問先の経営者にとっても、安心できる゛助演者゛がいる。
承継者にとっても、主役交代は一大事。
上手くいって当たり前のことに、失敗すれば、お客も離れてしまう。
そこを助けてくれるのが、譲り渡した税理士。
舞台から直ぐに降りるのではなく、時間をかけても良いのかもしれない。
事業承継支援室長
大滝二三男