所長が高齢になると、事務所の元気がなくなってきます。
当然と言えば当然ですが、若い職員がいれば、若干元気も出ます。
でも、一般的に言えば、職員も所長同様、歳を重ねてきています。
待遇のいい、定着率が高い事務所ほどこの傾向は強くなります。
職員に所長の息子さんなどがいると、定着率は低くなります。
これは、所長の家族だけが高待遇で、職員の不満が募るのも一因。
息子さんと同年代の職員から、一人抜け二人抜けし、職員は若返ります。
職員にとって働きやすい事務所かどうかは、一概には言えません。
一方、所長の家族がいない事務所の場合、番頭さんが力を発揮します。
所長の次に権力を持つわけですから、他の職員も一目置きます。
番頭さんのお眼鏡に叶う職員は、評価も高く、所長もこれを認めます。
その内、事務所の経営にも、番頭さんの意見が反映されるようになります。
給料は毎年上がり続け、30年以上勤務すると、所長より高給取りも出ます。
所長も70歳を超えると、資産も貯え済みになり、分配率も高くなる。
65歳を超えた所長は、営業活動をしなくなり、お客さんは減少傾向に。
その反面、職員の給料は減らないから、所長より高給取りになります。
ただし、所長の所得より、職員の給料が高くなるのは、所長は80歳超え。
この歳の所長の事務所では、往々にして番頭さんが高給取り。
もちろん、所長の所得を上回り、大きな権力も振り回す御仁も出てくる。
こんな事務所の事業承継は、これまた大変。
職員の給料に何らかのてを打たないと、引き取り手はなくなってしまう。
しかし、所長が職員の給料の減額を言えば、職員は抵抗し、職場放棄も。
自分達がいなければ、事務所は成り立たないとばかりに、大反対。
「反対だね、では廃業しよう!」と、言い切ってしまう所長も少ない。
事務所を即廃業してしまえば、中には路頭に迷う職員も出てくる。
それは可哀想だと考える所長は、ずるずるを先延ばしを図る。
見識のある番頭さんであれば、自らの定年も考え、所長の花道を飾る。
ところが、番頭さんも元気で権力は離したくない。
「先生が死ぬまで、先生に尽くす」などと力強く宣言。
そして、「先生も辞めるなんて言わずに、頑張ってください」。
ここまで来ると、高齢の所長の事業承継は、到底無理。
解決策は、番頭さん、あなたが所長とともに身を引くのは、一番。
そうすることで、若い職員たちの生活も守れようというもの。
こんな事務所にしてしまった経営の責任は、当然、所長が取る。
具体的にどうするか、それは所長の判断ひとつ。様々な方法があるでしょう。
「先生死ぬまで、云々」の言葉に従い、事業承継を諦めた先生もいます。
退職金を弾んで、高齢の職員に辞めてもらい、承継を果たした先生も。
もちろん、判断を先延ばした先生もいますが、心休まりません。
家族は体が心配だから、一日も早く辞めてもらいたいと願っています。
事業承継支援室長
大滝二三男