50年近く、お山の大将として活躍してきた税理士先生が初体験。
何かと言えば、退官する税務署員を雇用することにしたという。
しかし、これまでに税理士を雇う必要もなかったので、対応策が疑問。
ちなみに、現在でも職員が作成する決算書と申告書は、綿密にチェック。
電子申告ではなく、すべての申告書に署名押印しているという。
それだけに大きな事務所の所長が、申告書をチェックできるのかも疑問を持つ。
たしかに、10人以上職員がいる事務所であれば、所長一人では無理。
しかし、その規模で税理士を雇っていない事務所は、多く見受けられる。
そこで先生は、大規模事務所での勤務税理士への対応を参考にしたいという。
将来的に事業を承継させるのかどうかでも、待遇も異なるのは当然。
経験を積んで、独立を目論む若手税理士には厳しい指導も必要。
しかし、定年を越えて勤務していた税務署員を雇うとなると、覚悟がいる。
60歳を越えて税理士事務所に入ろうとするのは、事業承継を考えてのこと。
弊社の事例でも、OB税理士を雇ったが、経営には向かないと所長が判断。
そこで、法人と事業承継交渉をスタートすることにした。
この話を聞き付けた元税務署員の税理士は、話が違うと、即退社。
近い将来、事務所を引き継ぐつもりで入所したが、思いが叶えられない。
再び一職員として勤務することは、謂わば、屈辱といったところ。
相談に現れた先生は、現時点で事業承継は考えていないと言う。
そうなると、短期間で新入社員の勤務税理士は、辞めていくだろう。
どんな処遇をするかはわからない以上、雇うべきではない。
わからないから相談に来たのだろうが、明快な回答が出せるのは、先生のみ。
OB税理士を事業承継の対象とするのかどうか、事前に決めておくべきだろう。
その事を十分説明せずに雇用するとなると、後々問題が起こるはず。
先生が寝たきりになってしまうような大病を患えば、ことは重大。
多分、雇われた税理士が自分の事務所として、切り盛りするだろう。
職員も先生が動けなければ、新しい所長の下で働き始める。
その時は事業承継などという綺麗事は、吹き飛んでしまうだろう。
元気なうちはいいのだが、どうか先生が晩節を汚さないよう願うばかりだ。
事業承継支援室長
大滝二三男