30数年前に開業した税理士さんのほとんどが言います。
「自宅を事務所に、お客さんがゼロからのスタートでした。」
職員を雇えるようになったのが、3年から5年経ってからだ。
それまでは奥さんが手助けし、子育てにも奮闘。
今では、その奥さんも専従者にはなっているが、第一線からは離脱。
経済成長も続いており、時代が良かったと、誰もが考える。
現在はどうだろう。成長経済の時代は去った。
後継者不足などで、廃業する中小零細企業も少なくない。
これらの業者の多くが、会計業務は税理士に頼っていた。
税理士事務所にはどうしても顧客減で、経営も厳しくなっている。
税理士資格を取っても独立できずに、勤務税理士を続ける人も多い。
そんな中で、独立する税理士も当然皆無というわけではない。
友人や知人をお客にするのは、もちろん、新規開業者に的を絞る。
法務局で新規開業者リストを閲覧し、営業をかける。
法人、個人を問わず、税理士であれば、誰もが考える営業だ。
開業間もない企業にDMが届けられるが、その中に税理士も数件ある。
同じ地域にある税理士事務所だけでなく、他地区からも届く。
本当に厳しい営業が必要になっているのが、現実だ。
そういった状況下で、お客を持っている人と仕事ができれば、大助かり。
ここで、独立の際にお客を持っていくという面倒が起こる。
しかし、自分がいた事務所ではなく、他の事務所にいた職員なら?!
そんな知人がいれば、自分と一緒に仕事をしませんか?
そんな言葉が出るかどうかはわからないが、開業は順調に進む。
税理士自らが開拓していない、職員の顧客だけでは安心はできない。
強力なサポーターに違いないが、関係が悪くなれば、どうなる?
職員も自分のお客と強く主張すれば、いつかは税理士とぶつかる。
結果は明らか。お客を持ったまま職員は去っていく。
税理士の顧客という認識はないので、実に簡単に流れていく。
厳しい現実に直面し、勤務税理士に逆戻りする人も少なくない。
事業承継支援室長
大滝二三男