税理士事務所の事業承継の対価が、満額払われないうちに引き受け手が死亡したら?
さてこのような事例が一件も発生していないので、事例研究とはなりません。
しかし、税理士事務所の場合は、先生が死亡すると、その途端に顧問先との契約は亡くなります。
従って、お客さんとの顧問契約(顧問料)は、死亡に伴う相続財産とはなりません。
相続人の中には相続財産だとして、年間の売上を分割要求するケースも見られます。
訴訟にまで発展した事例はありますが、これは後継者がいる場合で、家族間の争い。
ところで冒頭のように、引き受け手が亡くなり、承継の対価の支払いが済んでいない場合が問題。
税理士事務所を継げない相続人でも、被相続人の負債を払うのは当然と、譲り渡した側は考える。
一方、相続人は事務所業務を引き継げないのだから、その時点で無価値なものを”相続”することになる。
つまり、その事業からは自動的に切り離され、相続自体ができなくなる。
従って、未払いになっている債務も、同時に消えてなくなると主張することもできる。
ところが、相続は出来なくても、契約時点で引き受け手に事務所業務はすべて移っている。
だから、未済部分は当然遺族に支払ってもらうのが筋。
実際には引き継げないので、実際の解決策は、遺族が引き受け手を探し、その代金で債務を解消する。
または、改めて譲り手が承継者を探し、売却代金から未済部分の金額や手数料を引いて遺族に渡す。
この方法なら、遺族には相続財産が渡るわけだから、両者にとっても良い解決策になるはず。
これはまだ机上の話だが、個人同士の場合は、いつかはこのようなことも起こるだろう。
事業承継支援室長
大滝二三男