税理士独りの事務所がほとんどなのが、個人の税理士事務所。
勤務税理士がいても、経営は所長がワンマン経営。
しかも、実務上の最終判断は、全て所長に任されているのが普通。
申告書のサインも所長がするので、それも当然のことか。
勤務税理士は、いわゆるパートナー・共同経営者にはなっていない。
そんな中で、勤務税理士の辞職を境に事業承継を決断する例もある。
所長として30数年間事務所を運営してきたが、パートナーがあってこそ。
共同事務所の形にしなかったのは、最終責任をパートナーに求めないため。
事務所職員の管理・指導などを勤務税理士に任せ、営業活動に専念。
決算や申告書の作成なども任せ、所長は最終チェックをし、サインをする。
勤務税理士と所長のダブルチェックで、税務調査でも非違指摘は皆無という。
そんな所長も70代後半になり、パートナーも高齢者の仲間入り。
サラリーマンであれば、定年で毎日が日曜日といったところか。
パートナーの勤務税理士から、体調不良を理由に辞職願いが出された。
所長もそろそろ引退の時期と考えていたところだったので、ここで決意。
二人揃って辞めてしまうのは、お客さんに対し申し訳ない。
そこで事業承継を考え、パートナーとともに候補者選びをスタート。
税理士会の同業者を考えたが、なかなか適任者は見つからない。
しかしある出会いで、創業間もない若手税理士が適任ではないかと判断。
その結果、暫く3人で事務所を運営。代表者は承継者が就任。
数ヵ月後、勤務税理士が引き継ぎを終え、その後も所長は顧問に。
顧客も所長の年齢を気にしていたが、若手経営者に好感。
スムーズな承継が出来たのも、実は勤務税理士の適切な判断があったから。
さらに、所長が長年、勤務税理士をパートナーとして重視したこと。
実際に勤務税理士の給与と所長の所得は、ほぼ同額。
勤務税理士もその事を知っていたから、気持ちよく働けたのかも。
このような承継事例を見ることはほとんどないが、実際にあるんですね。
所長も今でも事務所に出勤し、ボケないようお客さんにも会っています。
良い事例でした。
事業承継支援室長
大滝二三男