税理士事務所の事業承継を始めて9年間、様々な相談を受けてきました。
もっとも多いのは、後継者を紹介してほしいというもの。
これは、一番難しい要望。
所長であるご自身が、自分以外の税理士を認めなかった。
税務の最終判断は自分だけがする、資格がある職員には任せない。
この判断は経営者として当然だが、そのうち資格者の居場所がなくなる。
資格者は給料が高くなるので、経営を圧迫するとも考える。
そこで、合格者には独立を薦めてきた。独立が当然の時代だった。
だから、資格者は自分だけという期間がほとんど。
そろそろ楽になりたいと、事業を誰かに譲ろうと考え始める。
独立していった元職員・税理士に声を掛けるものの、良い反応がない。
そんな所長が、果たして後継候補の税理士に優しくなれるだろうか?
長年かけて築いた事務所のやり方、自分流を続けることが前提。
お客さんがそのやり方を指示しているので、変えないように指導する。
事業を譲り受けようと考える候補者には、ありがた迷惑なことに。
その結果、我慢できない候補者は去り、紹介者もいなくなる。
新たな顧客を探す苦労がないから、喜んで後継候補になるはず。
こんな思惑が見事に打ち破られる。
その原因はご自身にあることは、なかなか気づかない。
それに思いがいかない限り、事業承継の道は閉ざされるのだが。
長い事務所の歴史を閉じるのはそう簡単ではない。
事業承継支援室長
大滝二三男