後継者がいないままに個人事務所の税理士が死亡した場合、遺族はどう対応するのでしょうか?
勤務税理士も当然いない、税理士は事務所に一人いればいいと言っていた所長が急死。
遺族が事務所で働いていれば、急場をしのぐための対策も少しは分かる。
たとえば、故人の親しかった税理士に相談するとか、所属支部に藩士を持っていくとか。
それでも、なかなか自分たちの、家族の事務所であるという思い込みは消えない。
そこで、後継者と目される税理士が出てきても、相性などを理由に結論が出ない。
事務所を引き継ぐ人ということは理解できるのだが、事務所の収益は自分たちのものだと主張する。
とんでもないことだが、そういった考えをする遺族が非常に多いのも事実。
お父さんが人生をかけて作り上げた事務所を、赤の他人が持って行ってしまう。
そう考えると、早々簡単に事務所経営を渡すことは出来ない。
過去の例だが、死亡する直前に相談があり、契約条件などを決めていた先生がいた。
仲介役として本当に死亡される直前まで相談に乗り、相手とも交渉は順調だった。
しかし、先生との最終調整の段階になった時に、病院のベッドから一通の電話。
「娘や息子のすべてを話しているから、もしもの時はよろしく」という先生のか細い声。
電話があったその翌日、先生は逝ってしまわれた。
故人の葬儀などが終わった後に、遺族と最終的な打ち合わせをすることとなった。
そこで出た話が、「仲介者にはお願いしていません」という娘さんからの一言。
そしてまた、承継候補の先生も「遺族が望んでいないので、今回は辞めましょう」
ところがどうでしょう。その遺族と承継希望の先生はしっかりと話をつけていました。
たまたま承継希望の税理士と遺族は面識があり、相対で話をまとめてしまったのです。
実のところ、遺族には仲介者に払う手数料もなく、承継の対価もほとんどなかったと言います。
正確な話は亡くなった先生の事務所の職員から数か月後に聞かされました。
仲介者としては、実に間の抜けた話ですが、実際にこのような話があるのです。
たった一件の事例ですが、このようなことに遭遇すると人間不信にもなります。
しかも、承継した先生は今もわが世の春といった成功者の一人ですからね。
確定申告もあと2日、終わりますと、事業承継の話でまた忙しくなります。
事業承継支援室長
大滝二三男