税理士の事業承継といえば、同じ支部の若手税理士に依頼するというのが通例でした。
もちろん今でも、税理士会支部の役員を経験してきた先生は、同じ役員経験者に声をかけます。
同じ年齢の先生でも、後継者がいる先生には話がしやすいのでしょう。同じ人に依頼がきます。
個人の事務所では、早々承継ができるわけではありません。
先生がいいと言っても、職員の仕事が増えるわけですから、職員は良い顔をしません。
職員が動いてくれなければ、事務所は回りませんから、職員の顔色をうかがいます。
ワンマンな先生でも、日々の業務は職員が”主役”ですから、職員を無視することはできません。
そんな事情が分かってきたのかどうか、この一年で事業承継の依頼先も法人主体になってきました。
この依頼先というのは、個人事務所経営者の税理士が事業承継をお願いする先のこと。
これまでは、有力な個人事務所経営者に話が行くのが普通、支部の役員もそう考えていました。
しかし、支部の役員にも税理士法人の経営者がなるようになり、個人より法人という形が普通に。
自らも、数十年前に顧客を個人から法人なりすることを指導、節税効果などを説得してきました。
税理士の法人制度ができて13年を経過し、法人の良さを知った税理士がここにきて大挙法人なり。
もっとも、株式会社のように一人株式会社は、税理士には認められていないので、これが壁にも。
しかし、パートナーを見つけ出した税理士は、個人の枠から、法人への脱皮を図ります。
税理士一人で事務所を運営する時代は終わった、これからは法人の時代だというわけだ。
それを認める高齢の先生が、自分の事務所の伝統を維持してもらうためにも、法人に期待をかける。
個人事務所に頼めば、自分の事務所の伝統は依頼先の”先生色”にしまってしまう。
同じ無くなるのであれば、経営統合される形がはっきりする法人組織の方が期待できる。
しかも、後継者問題に悩むことがない法人組織であれば、お客さんも安心する。
そう考えた時に自ら依頼する先は、個人ではなく、当然法人に。
時には、先生も社員税理士として数年間は仕事ができることも考えられる。
個人の税理士事務所の経営は、今後は相当苦しくなることは、こんな状況からもわかる。
事業承継支援室長
大滝二三男